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性神がこの世に放った獣たち~起
第2章 車内
 途中軽〇沢の地元のスーパーで買い物をする。もちろん買い物は私の役目。妻は車の中ででゲームを続けている。
 買い物を終え、大きなレジ袋を二つ車に入れて、私と妻は別荘に向かった。少し前から気になることがあった。私の車の後ろにずっと付けて来ているような車があったのだ。スーパーに寄る前にもルームミラーに映っていたし、スーパーの駐車場でもその車を見かけた。そして別荘エリアに入ってもその車はついてきた。私はおかしいと思った。少なくともこのエリアで国産のコンパクトカーを見たことがない。
 管理事務所の電話番号を妻に訊ねる前に、私はもう一度ルームミラーとサイドミラーを確認した。するとその車は消えていた。気のせいか、私はそう思った。少し頭を働かせればわかることだ。別荘が富裕層の持ち物だとしても、そこに大金を持ってくるような金持ちなどまずいない。この私ですら先ほどの買い物はカードで決済している。常駐者以外、別荘には必要最低限のものしか置かない。その必要最低限のものを持ち出そうとすれば、たぶん管理事務所の職員に見つかる。そんなリスクを背負って窃盗するような奴らは、テレビと映画の世界の中だけに存在する。
 別荘が見えてきた。五百坪の敷地に3LDKの木造一階建て。三十畳のリビングには冬場に備えて薪ストーブがあり、全室床暖房で寒い冬を快適に過ごすことができる。寒さが苦手な妻は、冬ここに来ることはないが、私は一人でやって来る。だから私にとって冬の軽〇沢で過ごす時間はとても貴重なのだ。妻と顔を合わせずに済むし、好きな本を思う存分読むことができる。私に男としての度胸があれば、愛人を作り、妻のことなど気にしないで十畳の寝室で愛人を抱く。残念ながら私にはそれができない。結婚前、妻の父から強く念を押された。『私の期待を裏切るな、娘を不幸にしたら君の代わりなんて穿いて捨てるほどいる。わかったな』愛妻家と言えば聞こえはいいが、結婚して以来私は一度も妻を裏切っていない。亡くなった義父の言葉は、呪いとなって私の体を縛り続けている。
 大学生になった息子と娘に用意した八畳のゲストルーム二つは、ここ数年使われていない。今息子と娘は義母と一緒に二週間のヨーロッパ旅行に出かけている。
 敷地に入り、メルセデスを玄関前に付けた。
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