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北の軍服を着た天使
第3章 Episode 3
──9月に差し掛かって、もう10日も経った今日。
秋前だと言うのに温暖化のせいなのか一向に涼しくなる気配の無い外の世界に対抗するかの様に、酒飲みの鈴村さんが冷房の温度を22度に下げていた。
ウーファ株式会社に届ける分の整備が今終わって、明日には納車出来るとの報告を社長自ら、電話で李さんにしているのを横目で見ながら、とりあえず一段落した事にほっと胸を撫で降ろす。
ランドクルーザーが日本国内でも人気だから、良い商品を手に入れるのに少し苦労したけれど結果的に這いつくばってでも探し出した私達が手に入れた全ての車は、どこに出しても恥ずかしく無い程、状態は完璧な物ばかりだった。
社長の笑顔を見る感じだと、電話越しの李さんも喜んでくれていそうだ。
……悩んでも仕方ないと、心を入れ替えてからと言うもの、むしろウーファ株式会社に仕事の事で連絡を入れる時すら何も気を使わなくなったのが事実だ。
多分、私の脳内で❝彼らはビジネスパートナーである❞としっかり分類分け出来たのであろう。
この前なんか排気量をタイプミスで一億と書きそのまま李さんに送信してしまい、電話越しでそれを指摘された時、思わず「オゥマイガーア」なんて言うカリフォルニア女子みたいな話し方をしてしまった。李さんがそれを聞いてクスッと笑ってくれたのが救いだけど。
「はい、かしこまりました。では、明日入金を確認出来たら直ぐに指定された場所に納車する様にしますので!」
「あ。李さん今会社にいますか?……いや、ウチの者に上手いアイスクリームでも持って行かそうかなと思いまして。……はい…いやいや気を使ってるわけじゃないですよ!ただ、想像よりも早く事が終わって私も嬉しいんですよ。」
「……はい…あ、本当ですか。ありがとうございます。じゃあ、今から流川に行かせますんで!」
と社長が電話越しの❝スーパーエリート❞にそう伝えながら、少し乱暴に社用の財布を投げつけてきた。
これで近くにある『アイス愛す』と云う名のアイスクリーム屋さんで適当に人数分買って、ウーファに届けてこい。というような所だろう。
ペコッと小さく頭を下げてから、自分のバッグを持ち、時計を指差す。社長も時刻が17時前だという事に気付いたのか、そのまま直帰していいぞ。と云う具合にウンウンと頷いていた。