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北の軍服を着た天使
第3章 Episode 3
車についての説明をしながら私もアイスクリームの一つくらい食べれたら良いな、というちょっとした出来心から五つ入りのセットを購入した私は、いつものタイムズパーキングに背中を向けて領収書を綺麗に折り直し、財布にしまってからトコトコと見慣れたビルへと歩き出す。
例え、ここの開発が進んで10年…20年先に、ここが空き地になろうがマンションになろうが、私はこのビルを忘れる事は決して無いだろう。
日本という平和な国で、初めて銃を見た場所なんだから。
しかも帰るまで銃口を向けられていた。
忘れたくても、忘れる事なんて出来ない、良くも悪くも思い出深い場所だ。
「あ、明日の仕事終わらせようと思ったのに」
そんな独り言を呟きながら、なるべく人目に付かない様、前回キム・テヒョンに言われた通り路地裏を歩き、裏口の方からビルに入る。
夏場のこんな薄暗いドアや道なんてゴキブリの巣同然だと思うと歩きたくないけれど前みたいに銃を向けられるよりはマシだ、と自分を言い聞かすしか無かった。
5階まで階段を登る途中に、沢山の監視カメラが有る事に気付く。まあ、これも全部を理解した今ならハッキリと誰が何の目的で付けたのか分かる。第一に、こんな古いビルにこれだけのカメラは可笑しい。
フッと北朝鮮旅行の際のカメラの量を思い出して鼻で笑いそうになるのをこらえた。