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北の軍服を着た天使
第3章 Episode 3
中へ入ると同時に私のバッグを強引にもぎ取った目の前のイケメンは許可を取る事なく、絨毯の上にバッグの中身全てをぶちまける。化粧ポーチ、あぶらとり紙、マウスウォッシュ、口紅、車のキィ、そして…ボールペン?
一つ一つを、丁寧に素早く確認していく彼は私の目線がボールペンに移っている事に気付いたのだろう。
お前のか?と問うようにボールペンを拾い上げて少しだけ首を傾げた彼に、私も何も言わずに首を振った。
「………。」
すると、小さなため息をついてから李さんにボールペンを手渡したテヒョン。
李さんは、決して私のものではない見たことのないボールペンを見つめると、慣れた手付きで分解し、中に入ってあった一センチにも満たない黒い機械を足で踏み潰した。
まるで、スパイ映画さながらだ。
ここでやっと彼がなぜ私に喋るな、と口止めをし一刻も早く社内へ入れようとしたのか理解した。
「盗聴器だな。」
「ですね。多分、中国当局の仕業でしょう。」
「……ターゲットは?」
「まあ、リサさんでしょうね。」
「──へっ、私ですか?」
驚きのあまり、目も口も鼻の穴も全てが大きくなっている事だろう。
そんな私を見た李さんは、大人らしい落ち着いた笑みを見せてから「まあ、座って下さい。コーヒーでも淹れますね。」と言ってから、立ち尽くす私の左手にあったアイスクリームの入った紙袋を取ると、窓際にあるコーヒーメーカーの方へ向って歩き出した。