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北の軍服を着た天使
第3章 Episode 3
「あのー…」
「流川さん、どうぞ。珈琲でも召し上がって下さい。差し入れ、ご自身でも食べるおつもりで一つ多く買ってきたでしょう?」
全てを見透かされてるな…と思いつつ、その通りなので首を縦に振ると、既に用意されていたのかアイスクリームと淹れたての珈琲が入ったティーカップが目の前に出された。
この珈琲の中にアイスを入れても美味しいかもしれないな。
まあ、そんな事をしたら❝資本主義の成れの果てだ!❞と言われかねないから自宅で食べる時位じゃないと出来ないけど…。
「先程の男性が私のバッグに仕込んでいたのって盗聴器ですか?」
「ぶつかった時に入れたんでしょう。」
「今思うと、約束の時間になってもダラダラと話を伸ばして帰らなかったのは向こうだからな。あながち、外の見張りとタイミング合わせて出たんだと思う。」
「私が標的だったって事ですよね?」
「……。」
「あのっ…あの人は誰なんですか?」
この質問をして良いのか分からない。でも盗聴器をあんなぶつかった一瞬でバッグに投げ入れると云う事は──さっきチラッと聞こえた❝当局❞の人間しか有り得ない。
「中華人民共和国国家安全部の人間だ。」
「中国……」
自分を落ち着かせるために珈琲を一口飲んでから、アイスクリームを口に放り込んだ。苦さと甘さがマッチして良い感じだ。コーヒーフロートの高級バージョン、みたいな。
「──……。」
「確かに北朝鮮の友好国といえば中国ですもんね。中国の人が此処に来ていても可笑しくないか。貴方達も中国人という設定だと思うし、この日本国の中では…」
「純粋なビジネスの話をしていました。安全部の人間がアルファードを買いたいと言っていたので、その納車期限や価格について…ね。」
「あ、なるほど…。」
アルファードは北で使う用じゃなくて、中国に売る用だったんだ。やっぱり外貨委員会の人達の根っこはビジネスにあるんだ、と考えなおす。