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無垢な彼女
第1章 無垢な彼女


その直後小山の前の席に来たのは柔道部の一番デカいやつ。身長は190㎝近くある上にガタイも良く完全に壁のようになっていた。

案の定小山は前が見えないらしく、キョロキョロしていた。


「前の方の席と代わってもらえば?」

「平気だもん!」

「誰だー?デカい声出してるやつは……ん?小山?こっちからも見えないな。ほら、席代わってもらいなさい」

「やだぁ!くじ引きで決まった席だもん……」


小山はスカートをギュッと掴んで泣きそうだった。


小さいからという扱いを受けるのがよっぽど嫌なんだろうな。
見てて心配になる気持ちもわかるけど…

今回二年になって初めての席替えなわけだけど、前回小山の席は通常なら学年が上がって最初の席は出席番号順が当たり前だが、新学期が始まる時に担任が気を遣って小山の席を一番前にしていた。

しかし…また一番前の席になると席替えイベントを小山だけ毎回楽しむことができないのではないだろうか。


俺は立ち上がって小山の机を自分の隣にくっつけた。


「え?大野君なにするの!?わぁ!やだぁ!」


小山が座っている椅子も小山ごと持ち上げて移動させる。


「ここだったら通路のところだから黒板見えるだろ?」

「ほえ?ああー!本当だー!見えるよー!」

「先生、一番後ろの席だし授業中だけならいいですよね?」

「あ…あぁ。いいだろう」


小山はこんな簡単なことだったが、無邪気に笑っていた。
よっぽど嬉しいらしい。
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