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無垢な彼女
第8章 甘美な彼氏
鴨宮君のお姉さんのお家のマンションに着いて、リビングのソファに手を繋いだまま座った。
しばらく沈黙が続く。
「…………フランス行くなんて聞いてなかった」
「……言ったら…優菜、絶対俺が日本に戻るまで待っててくれるじゃん…」
「待つよ!それに大学行ったらアルバイトしてお金貯めて会いに行くもん!」
「そう言うと思った……俺もそうしてもらえるなら嬉しい……嬉しいけど…いつ戻るかもわからないのに……そばにいてやれないのに……優菜の事縛るような事したくない」
「…いつ戻るかわからないの?」
「あぁ……俺の父さん、フランスでパティシエやってて…向こうの製菓学校に通いながら父さんの元で修行するから」
「……いつも持ってきてくれてたスイーツ…鴨宮君が作ってくれてたんだね」
「…父さんが帰国してたから…昔から帰国して来た時は作り方教えてくれる…」
「……もー…初めて聞く事ばっかり!鴨宮君全然自分の事話してくれないんだもん!」
「…優菜の分析に必死だったから…好き過ぎて……クソ…………優菜の事離す覚悟決めてたはずなのに……」
鴨宮君の目から涙が頬を伝っているのが見えて、私は鴨宮君を抱き締めた。
「……雄君の事待ってたら駄目?」
「………駄目……大学行って…社会人になって………何があるかまで俺でも分析出来ないけど…優菜には幸せになってほしい…」
「………わかった……その代わり雄君も幸せになってね…」
「あぁ…」
私はそれぞれの道を進む事を受け入れた。
最後に鴨宮君と食べたチョコレートケーキは涙の味でいっぱいだった。
鴨宮君と過ごす最後の夜は久しぶりに安心して…ゆっくりした時間。
鴨宮君がたくさん優しく愛してくれた夜は忘れられない思い出となった。
そして次の日。
卒業式後、鴨宮君はフランスへと発った。