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女堕ち
第1章
そして不意に我に返ったように、有紀子を離し、うつむいた。
「す、すみませんっ……興奮してしまって……許してください」
有紀子は手の平で髪を整えながら、
「あ……いえ……」
と言葉を濁す。
遼一は作り笑顔で、
「すみません……今日のことは夢だと思って忘れてください……でも私は夢が叶いました……」
頭を掻いた。
有紀子は遼一を見つめた。
遼一も見つめ返した。
「今日は付き合ってくれてありがとう……家まで送れなくてすみません……じゃ、気をつけて……」
遼一は有紀子に背を向けると歩き出した。
未練など全くないという早い足取りで。

堕ちた、と思った。
有紀子は堕ちた。
チェックだ。
詰める。
次の一手でチェックメイトだ。
遼一はスラックスのウエスト部分から股間に手を差し入れると、中から太い油性マジックペンを取り出した。
桜井有紀子、42歳。
身長158センチ、細身、髪は肩まであるストレートな黒髪。
胸はあまりない、化粧と服装には派手さがなく、ベーシックにまとめている。
子供一人、そして……旦那も。
遼一は、ふっと、笑った。

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