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想い人
第3章 それぞれの想い人
でも、幸せな時間は短い。

「透也くん!」
泣きながら蕾さんが透也に駆け寄ってきた。

「どうかした?」

私は呆気なく透也から引き剥がされる。

─────これが、現実……。


「両親が会社に来るって……」

「え? 何で?」

両親? 蕾さんの?

言葉を濁した蕾さんが、戸惑いがちに私を見た。

完全に、私が”邪魔者”な雰囲気。


「あ…ごめん、美空。また後でな」

透也はポンポンと私の頭を軽く叩くと、向こうで話そうと蕾さんに声を掛けて歩き出す。

俯く私。

蕾さんはすれ違い様に、衝撃的な言葉を残していった。


「昨晩、両親に紹介したのよ? ”婚約者です”って」


─────…‼︎

目を見開き蕾さんを見つめる私に、蕾さんは満足げな笑みを浮かべる。

必死に我慢したのに、見開いた瞳からは涙が零れ始めていた。


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