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恋する妻
第6章 パン屋の姉弟
「なに、悠…?」
郁は笑顔で僕に寄り添うと、僕の手を自分の胸に導きました。そして姉弟ごっこの「あそび」はまだ続きました。

「お姉、昨日のこと…もっと話して」
「…悠、みんな忘れちゃった?」
郁は天井を見つめたまま、話を続けました。

「悠の部屋で…お姉、裸になったよ」
もう何も、郁は隠しません。そしてこれまでのことを、隠すことなく告白しました。

「10月初めだよね…初めてお姉が悠の部屋に行ったの」
「10月?」
「うん、悠がインフルエンザになった時」
その頃、僕は出張で一週間ほど地方に行っていました。

「うん、お兄が出張の頃…」
「…それから?」
「うん、いつもご飯作ってあげてるよね」
最初は本当に、郁の気持ちは弟に対する愛情でした。新しく知り合った可愛い弟に、ちゃんとしたご飯を食べさせたい思いで、郁は悠のアパートに行っていました。

「お店の人…特にオバちゃんたち、みんな悠が好きだよね」
「人気者?」
「うん…悠、真面目で可愛いから」
郁は嬉しそうに、悠のことを話し続けました。

「休憩の時、悠、みんなに弄られてた…ちゃんとご飯食べてるのって」
長身の悠は確かに細く、ひょろっとしています。

「悠、料理できないから…オバちゃんたちに、怒られてた」
「悠、怒られてるの?」
「ううん、愛のある弄り…それであたしも、怒られちゃった」
郁は僕に向き合うと、キスしてきました。僕は郁の告白に夢中で、為すがままにされました。

「お姉ちゃんが、ちゃんと面倒見なよって…」
「オバちゃんたちに…?」
「そう、オバちゃんたちに!」
いつの間にか郁は、素に戻っていました。そして全て、事実を告白していました。

「その頃から…悠と?」
郁は返事をせず、僕の顔を見るとキスをしてきました。僕が応えると、意地悪な笑顔でさっと唇をひきました。そして、さらの告白を続けました。

「インフルになった時、お姉看病に行ったよね…弟の部屋」
郁はラインで悠に連絡し、病院にも行けずひとりで熱に耐えていることを知りました。それは当初、本当に弟に対する愛情でした。
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