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恋する妻
第6章 パン屋の姉弟
「最初はラインで住所を聞いて…着いたら古い、学生向けのワンルームでね」
郁は覚悟を決めたように、僕の目を見て話しました。

「出てきた悠…熱でフウフウ言ってた」
「うん…」
「それで、お医者さんに連れてってあげた」
悠はインフルエンザでした。特効薬をもらい、徐々に回復しました。

「悠がね、お姉に移ったら申し訳ないって…だから予防で、あたしも薬飲まされて」
郁は嬉しそうに話していました。そして優しい目で、僕を見つめました。

「でも悠、タクシーの行きも帰りも、病院の中でも震えてたから…」
「震えてた?」
「だからあたし、ずっと悠を抱いてた」
長身の悠は座ったまま身体を小さく丸め、悪寒に震えていました。

「帰って悠を寝かせて、ご飯の準備をしてたら…悠がまた震えだして」
悠はまた熱が上がったようで、急に強い寒さを訴えました。郁は心配で仕方がありませんでした。悠はベッドの中で震えていました。

「寒い?って聞いたら、すごく寒いって…」
「うん…」
「布団に毛布まで着ても、寒いって震えてた…」
郁は布団の上から、悠を抱きしめました。悠は目を瞑ったまま、郁に気付かず震え続けていました。

「可哀そうで…うん、すごく心配だった」
郁はインフルエンザがうつることも忘れていました。そして布団の中に入り、直接悠を温めました。

「悠、ちょっと朦朧としてた」
悠は大きな身体を小さく丸め、寒さに震えていました。郁は小さな身体を伸ばし、全身で悠を抱きしめていました。

「悠の身体、すごく熱かったけどずっと震えてた」
「…悠はパジャマ?」
「ううん、パンツとTシャツを着てた…それが悠のパジャマ」
郁は少し上気した顔で答えました。僕はまた、興奮を覚え始めました。
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