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恋する妻
第6章 パン屋の姉弟
「お兄…冬山で遭難したとき、どうするか知ってる?」
「…うん、知ってる」
「やっぱりwお兄、物知りだもんね」
笑いながら郁は答えました。しかしその眼は、さらに妖しくなっていました。

「冬山なら…裸で抱き合うよね?」
「うん…だから、あたしが裸になった」
郁は布団の中でその日着ていたシャツとキャミソール、履いていたジーンズを脱ぎました。そして下着だけになり、Tシャツとブリーフの悠を抱きしめ続けました。悠はしばらくすると震えが止まり、寝息を立てていました。インフルの薬が効いていました。

「悠、すこし落ち着いたみたいで…あたしの胸に顔を埋めてた」
「…悠は気付いてた?」
「ううん、薬が効いてずっと眠ってた…」
郁は少しホッとすると、自分のしていることに気付きました。そして、恥ずかしさと興奮を覚えていました。

「弟なのに…うん、すごく意識しちゃった」
寝息を立てる悠のあどけない顔に、郁は母性と異性を同時に感じていました。そして落ち着いた悠は布団の中で小さく、胎児のように郁に抱かれていました。

「悠が愛しくて、可愛かったの…」
郁の胸に抱かれた悠は、大量の汗をかき始めました。それは熱が下がっていく証拠でした。郁はホッとしながら、しばらく悠を抱きしめていました。

時間を見ると、既に1時間以上が過ぎていました。郁は布団を出て、小さなベッドから下りました。そして下着のまま、タオルを取りに行きました。悠は薬が効いて、熟睡していました。

小さなベッドに戻ると、郁は悠の体温を測りました。38度をずっと超えていたのが、もう37度近くまで下がっていました。そして郁は、悠の掛け布団と毛布を静かにはがしました。悠は小さな寝息をたて、丸めていた身体を伸ばしていました。全身に汗をかいた後で、着ているTシャツとブリーフ、髪の毛まで濡れていました。

「そのままにしたら、身体が冷えてまた熱がぶり返すでしょ?」
郁は汗で濡れたTシャツを脱がし、悠はブリーフ一枚にされました。しかし、悠は目を覚ます気配がありません。さっきまでの辛そうな表情が嘘のように、健やかな表情で深く眠っています。
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