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Love triangle +1
第5章 塁
どんな親切にされても、普段だったら初対面の人についてなど行かない。
男性なら、尚更。
でもこの時は何故かよく分からないけど、彼は大丈夫だという絶対的な確証があった。
高校時代からの記名された傘をずっと使っている人。
それを惜しげもなく他人に譲れる人。
焦ってスマートフォンを連続で落としてしまうような人。
お腹が大きく鳴ってしまうくらい空腹でも、一生懸命仕事を頑張ってきた人。
そんな人間に悪意や企んでいる何かが事があるとは、どうしても思えなかった。
了承すれば、彼は心底嬉しそうに笑った。
駅から離れないようにという配慮は、帰り道を心配して。
小路に入らなかったのは、警戒心を抱かせてしまうから。
さり気ない気遣いは、彼への信頼を強くした。
明るい大通りを数分歩いた距離にある、イタリアンレストランで食事をした。
訪れたのは二人とも初めてだったが、全てが美味しい大当たりの店だった。
こういう事にあまり慣れてないからごめんと、事前に謝られていた。
確かにぎこちなさはあったけれど、場を一生懸命盛り上げようとしてくれていたのは十分伝わってきた。
彼の実直さが、その一回だけの食事で分かった。
会計時にひと悶着あったが、傘を借りた側のお礼だからと自分が払う事でどうにか納得してもらえた。
帰り際、タクシーを呼ぼうとする彼を、近くだからと丁寧に断った。
いよいよお互い別れようかという直前だった。
彼が深々と頭を垂れてきたのは。
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