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Love triangle +1
第5章 塁
『日を改めて、今度は俺に傘を返してもらったお礼をさせて下さい』

それでは結局、意味がなくなってしまう。
お礼をするのはあくまで自分の方だからと固辞すれば、彼が食い下がってきた。

『じゃあ、お礼抜きだったらいいですか?』
『お礼抜き……?』
『傘を貸したとか借りたとか一切関係なしで。誓ってこんな展開を望んで貸した訳でも、まして食事に誘った訳でもない。……けど、あなたにまた会いたいって思ってしまった。初対面の男にいきなりそんな事言われたら、引きますか?……迷惑、ですよね。やっぱり』

語尾に近付けば近付く程、弱々しくなってゆく。
だが次の瞬間、その声音と表情はがらりと変化を遂げた。

『こんなに綺麗な人だし、玉砕覚悟で喋ってます。傘を差して帰ってくれた事が嬉しくて。その傘をわざわざ返しに来てくれた事がとっても嬉しくて。10年使い続けてる傘を、物持ちがいいって言ってもらえた事が凄く嬉しくて。緊張で上手く喋れない自分の話を頷きながら聞いてくれたのが、すっごく嬉しくて。向かい合ってご飯を食べてる時の笑顔が……もう、ほんとに可愛くて』

先程までのどこか遠慮がちで頼りなげにも見えた彼は、どこにもいなかった。
真っ直ぐ自分を射抜く両眼に、釘付けとなった。

『好きに、なってしまいました』

出会ってすぐの異性を口説いた経験など皆無の彼が、耳まで真っ赤になりながら想いをぶつけてきた。
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