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花狂い
第5章 恵 2

高島は催事場へ顔を出した 

中元商戦は これからだが 前倒しで展示している
まだ人も少ない売り場に
一人女子従業員が 所在なさそうに座り
声を掛けると

肩までのウエーブの掛かった髪を上げ
丸顔の女性が顔を上げて 

「 始まりは こんなものですね 」

「 月末から 来月がピークですから 」
所在なさそうに呟いた

「 大変ですけど お願いします 」
と頭を下げ事務所に戻り 

昼時 フロワーを回ると 所在なさそうに店員たちが
フロアーに立っていた

・・・暇なのに 休憩ダメって 可笑しいよね・・・

聞こえよがしに 加藤が同僚に話すのを無視して
事務所に戻り 

2時過ぎ 久保山がエスカレーターで
道畑夫人を7階のVIPルームに案内するのが見えた
阿佐ヶ谷にあの人はと尋ねると 

この地で 有名な企業の社長夫人で
道畑と教えられ 二年前にご主人が脳溢血で倒れ
一命は とりとめたが仕事は長男が受け継いでいると
この店の創業からのお得意様で

年二回の 贈答時期は売り上げの
3割を占めるお客様と教えられた 

6階から 加藤がVIPルームに入って行き
久保山が出て来た
阿佐ヶ谷が

「 週三四回はあれだよ 」

「 加藤さん あれで四時五時までVIPルームさ 」
と苦々しげに言い捨て

「 お得意様の接待名目のさぼり 誰も言わないけど 」

「 あの会社 大丈夫なのかな? 」

「 娘婿が何か 大変そうとこの間話していたけど 」
と付け加え

来店したお客様の対応に行った
阿佐ヶ谷の 名前をSNSに挙げられてから
名指しで服を作りたいと
来店するお客様が増え 
阿佐ヶ谷は 嬉しい悲鳴を上げていた
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