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花狂い
第3章 恵
智子を送ってマンションに戻ると
冷蔵庫にビールを放り込み
冷えたビールを取り出した
余り飲まない事と言われているが
手以外が 元気なのは困る 幸い左腕のギブスなので
普段の生活に支障は無い TVを点け
漫然と見て 来週位から仕事に
復帰しようかと考えていた
チャイムが鳴り出てみると 須賀が何か出来る事無いですか、
と尋ねて来た
部屋に入れ お湯を沸かして紅茶を出し
須賀が 頭に落ちて来たの覚えてる、と言い
衝撃を覚悟したら 来なくて見たら
課長の腕がと泣き出した
高島がティッシュを渡し 涙を拭かせると
須賀に笑顔が戻り 晩御飯作りますよと
台所に立とうとするのを 止め
気にしないで 話しでもしようと
店の事を 色々と聞いて その日は帰って行った
帰り際、明後日来ても良いかと 聞かれ
部屋から 出ないから大丈夫と答え ドアを閉め
リビングの壁に 寄りかかりビールを開けた時
僅かな 寂寥感を覚えた
約束通り 夜に須賀がチャイムを鳴らして入って来た
2DKの広さは 高島には広すぎた
単身と伝えたのが 何処かで家族でに変わっており
赴任した時 案内され初めて知って
荷物を 一つの部屋に押し込み
一部屋に寝具を 置いて 台所の付いたリビングは
冷蔵庫とテーブルだけの
殺風景な部屋と成っていた
妻が手伝いに来て 荷物の整理と言っても
一日で終わり 一週間の間 結婚当時を思い出すように
昼夜と寝室で過ごしていた
昼は散り始めた 桜を夫婦で眺め
桜の下で握り飯を頬張り 何も話さずに
桜が散るのを夫婦で眺めていた
休みも二週目に入ると 腕以外元気な体は
暇を持て余す 車でと思うがギアを入れる時
腕に負担が 懸かることで断念し近所を散歩して
後は部屋で読みたかった本を ビール片手に読みふけり
夜冷凍食品を温め 食べながらTVを見て布団に入る
横に成り 明かりを消し先週まで横に居た妻が
家に帰り 広々とした空間にふと
寂しさを感じていた