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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
「亮ちゃん、亮ちゃんはもう政治家なんだからどっしり構えてなきゃダメよ。慌てて窓から外を見回すなんてそんなみっともない真似止めなさい。急いては事を仕損じる。政治家に一番必要な資質。焦っちゃダメ。でも今着ているスーツは素敵よ。覚えてる? そのスーツは私が選だの。それからネクタイのセンスも最高よ。派手だと政治家としての重みがなくなる。頭の中が空っぽな政治家は信用されない。地味過ぎると、一般人と政治家の境目がなくなる。存在感の薄い政治家は票を集められない。だから私は亮ちゃんに真ん中を選べと言ったでしょ。その真ん中が川幅位あってはだめ、真ん中の幅は糸」
「……」
 思い出した。確かに沢田絵里……ではなく江村都子は私にそうアドバイスした。
「懐かしいわ。亮ちゃんが近くにいるだけで私胸がどきどきしたのよ」
「江村さん」
「江村さんなんて他人行儀な言い方は止して。私は沢田絵里。絵里とか君って呼ばれたいんだけど」
「俺が知りたいのは本当の沢田絵里さんはどこにいるのかということだ? 教えてくれないか?」
「困ったわね。これじゃいつまでたっても堂々巡りになるわ」
「生きているよな?」
「……」
 沈黙。
「沢田絵里さんは生きているんだよな?」
「私が沢田絵里。亮ちゃんは今、沢田絵里に対してあなたは生きていますかと訊ねているの。おかしな質問よ。それとも亮ちゃんの問いの中に哲学的な意味が含まれているの?」
「哲学なんて関係ない。俺は真面目に訊ねているんだ」
「……」
 また沈黙。
 あっ!私は心の中でそう叫んだ。この静寂は計算されて作られている。決して江村都子が言葉に詰まっているのではない。
 江村都子は私のすぐそばにいる。でなければ私のスーツやネクタイを認めることはできない。落ち着いて考えればわかることだ。外から市長室の窓を眺めたところで、窓越しにいる私が何を着ているのかなんてわかるはずがない。
 江村都子は時間と空間を自由自在にコントロールしている。
「……」
 私は言葉に詰まった。何を話せばいいのかわからない。
「亮ちゃん、今の亮ちゃんの顔が政治家の顔よ」
「……」
「会いたいわ。亮ちゃん、約束の場所に来てくれる?」
「約束の場所?」
「そう、約束の場所」
「君と何か約束した覚えはない」
「ふふふ、五分後にメールを送るわ。明日の午後三時、私はそこで亮ちゃんを待っている」
「……」
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