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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
五分後、私は都子から送られてきたメールを開いた。メッセージのないメールには写真が一枚だけ添付されていた。その写真が私を“約束の場所”に導くのだろう。
白黒の写真。この写真が私と江村都子を結びつけている? あり得ない、というより送られてきた写真に全く心当たりがない。だが、なぜか私はその写真に惹きつけられた。
喜びや怒り、悲しみと楽しみが混在する人間の内面をはるかに超えた別次元の感情が写真の中にあった。そしてその人は静かに息をしている。
息を吸い息を吐く、しかしその音は聴こえない。どうして聴こえないのだろうか? そうだ、そこには空気がないのだ。媒質がなければ音は伝わらない。けれども写真に写っている人物(?)は空気がなくても息をしている。
私は市長室に備えてあるパソコンで写真に写っている人物(?)を調べた。私がマニアならパソコンで調べる必要なんてないのだろう。残念ながら私はそういうものの愛好者ではない。したがって写真のその人物(?)が誰なのかとわかるまでしばらく時間がかかった。
「ここが約束の場所か」
私は白黒の写真を見てそう言った。
職員専用の出入り口前に竹内の運転する車が止まっていた。竹内は私を認めると運転席から降りた。それから私が乗車できるように後部ドアを開けた。
「竹内さん、そんなの長谷川にさせればいいのよ。長谷川、そんなことくらい自分でやりなさいよ」
出入り口でそれを見ていた香坂がそう言った。
「これは私の仕事でございます」
竹内は香坂に一礼してそう答えた。
「お前も乗っていくか?」
「結構です。副市長の私には自分で運転する車がありますので」
「小さい車だけどな」
「長谷川、今あなたは全国の軽自動車ファンを敵に回しました」
「それは困ったな。香坂、黙っててくれ」
「ふん」
私と香坂のやり取りを聞いてきた竹内が小さく笑った。
「それじゃ、来週」
「ゴルフの練習忘れないように。一度でいいから咲子さんに勝ってみなさいよ」
「大きなお世話だ」
私がそう言うと、竹内の笑い声は大きくなった。
「市長、お疲れさまでした」
竹内は毎回そう言って私を労う。
「竹内さん、今日もありがとうございます」
私はそう言って車に乗り込んだ。
遠山機械工業のロボットが作った車が静かに発進した。その瞬間私の体に溜まっていた疲れがすっと消えた。
白黒の写真。この写真が私と江村都子を結びつけている? あり得ない、というより送られてきた写真に全く心当たりがない。だが、なぜか私はその写真に惹きつけられた。
喜びや怒り、悲しみと楽しみが混在する人間の内面をはるかに超えた別次元の感情が写真の中にあった。そしてその人は静かに息をしている。
息を吸い息を吐く、しかしその音は聴こえない。どうして聴こえないのだろうか? そうだ、そこには空気がないのだ。媒質がなければ音は伝わらない。けれども写真に写っている人物(?)は空気がなくても息をしている。
私は市長室に備えてあるパソコンで写真に写っている人物(?)を調べた。私がマニアならパソコンで調べる必要なんてないのだろう。残念ながら私はそういうものの愛好者ではない。したがって写真のその人物(?)が誰なのかとわかるまでしばらく時間がかかった。
「ここが約束の場所か」
私は白黒の写真を見てそう言った。
職員専用の出入り口前に竹内の運転する車が止まっていた。竹内は私を認めると運転席から降りた。それから私が乗車できるように後部ドアを開けた。
「竹内さん、そんなの長谷川にさせればいいのよ。長谷川、そんなことくらい自分でやりなさいよ」
出入り口でそれを見ていた香坂がそう言った。
「これは私の仕事でございます」
竹内は香坂に一礼してそう答えた。
「お前も乗っていくか?」
「結構です。副市長の私には自分で運転する車がありますので」
「小さい車だけどな」
「長谷川、今あなたは全国の軽自動車ファンを敵に回しました」
「それは困ったな。香坂、黙っててくれ」
「ふん」
私と香坂のやり取りを聞いてきた竹内が小さく笑った。
「それじゃ、来週」
「ゴルフの練習忘れないように。一度でいいから咲子さんに勝ってみなさいよ」
「大きなお世話だ」
私がそう言うと、竹内の笑い声は大きくなった。
「市長、お疲れさまでした」
竹内は毎回そう言って私を労う。
「竹内さん、今日もありがとうございます」
私はそう言って車に乗り込んだ。
遠山機械工業のロボットが作った車が静かに発進した。その瞬間私の体に溜まっていた疲れがすっと消えた。

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