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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
「……」
 私の問いに京子は答えない(沢田絵里でないことは確かだ。都子かもしれないが、私は京子だと思う。
「答えてくれ」
 私は隣にいる京子に目をやった。京子は紫色のコートを着ていた。
「ようやく亮ちゃんが私を見てくれた。何だか嬉しい」
「……」
「ねぇ亮ちゃん」
「何だ?」
「あの天才物理学者アインシュタインでさえ、宇宙の謎を解くことが出来なかったわ。宇宙に始まりはあったのか? この宇宙は定常的なものなのか?」
「君は何が言いたいんだ?」
「慌てちゃダメ、亮ちゃんは政治家でしょ?」
「……」
 私は京子の話を待つことにした。
「でも今こんな風に考える科学者がいるのよ」
「……」
「今の宇宙の前には別の宇宙が存在していた。そしてその別の宇宙の前にも違う宇宙が存在していた」
「初めて聞いたよ。で、君はどう思っているんだ?」
「宇宙のこと?」
「ああ」
「ふふふ」
「可笑しいか?」
「亮ちゃんはどう思う?」
「一つだけ言えることがある」
「何?」
「アインシュタインに時間があれば、彼は必ず謎を解いてくれた。彼は本物の天才だ」
「その点について異議はないわよ。でも私がききたいのは亮ちゃんのこと。アインシュタインのことじゃないわ。亮ちゃんの宇宙論がききたいの」
「俺は天文学者でもなければ物理学者でもない。俺の答えに意味なんてない」
「正解なんてなくていいじゃない。天文学者でも物理学者でもない亮ちゃんの答えがききたいわ」
「宇宙に始まりがあったら……何だか侘しいな」
 京子の問いに、私は思ったことを隠さずに答えた。
「ふふふ、私も亮ちゃんと同じよ。始まりがあるということは必ず終わりがやってくる。そんなのいやじゃない? 終わりがあるなんて悲しいわ」
「形あるものはいつかは壊れる。人間はそれを受け入れなければいけない」
「ふふふ。亮ちゃんはまだ悟りの境地に達していないわ」
「どういう意味だ?」
「亮ちゃん、弥勒菩薩の前に立ってもまだわからないの? 形なんてどうでもいいことよ。形のないものに意味があるの。宝冠弥勒は亮ちゃんに語りかけているのよ。それを受け止めることが出来ないなんて、亮ちゃんは大馬鹿者」
「……」
 私には京子に返す言葉がなかった。
「私が立花京子だったらいいのかな? それとも江村都子だったらいいのかな?」
「俺は真実が知りたいんだ」
「真実……ふふふ」
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