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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
「ふざけないでくれ」
「ふざけてなんかいないわよ。それに亮ちゃんは薄々気付いているんじゃないの?」
「気付いていいる? 俺が?」
「そう」
「京子と都子。頭を取ってつなげると京都。おそらく京都は君のお父さんとお母さんにとって特別な場所なんだろう。だから双子の君たちのために京と都を分けて付けたんだ」
「それだけ?」
「京と都をわけても君たちの名前は同じだ。京は訓読みでみやこと読むことができる」
「……」
 静寂。京子は表情を変えずに弥勒菩薩を見ている。
「何とか言ってくれ」
「亮ちゃん、手を繋いでくれる?」
「俺には咲子がいる。君と手を繋ぐことはできない」
「バカ」
 京子はそう言って私の手を掴んだ。私は驚いた。手を掴まれたことに驚いたのではない。京子の手が氷のように冷たかったから驚いたのだ。私は京子の手を離すことが出来なかった。
「今まで君はどこにいたんだ? 冷蔵庫の中にでもいたのか? それとも体の具合でも悪いんじゃないのか? こんなに手が冷たいなんて」
「心配しなくていいわよ。どこも悪くないわ」
「……」
「亮ちゃんの手、温かいわ」
「……」
「亮ちゃん、亮ちゃんの話しを私にきかせてくれない?」
「どうして?」
「恋人同士ってそう言うものじゃないの?」
「君は俺の恋人じゃない。俺には」
「亮ちゃんが話してくれたら、私も話す、交換条件ね」
 京子は私の言葉をそう言って遮った。
「つまらない話しか俺にはできない」
「恋人同士にはつまらない話が一番大切なのよ」
「本当につまらない話だぞ」
「ふふふ、どうぞ」
「以前の部下たちが市長室に陳情書を持ってきた」
「陳情書? 市民じゃなくて?」
「ああ、男二人女一人、彼らは笑いながら俺に陳情書を提出した」
「どういう内容?」
「笑うなよ」
「ふふふ」
「役所に職員や市民が利用できるレストランがあるんだけど、部下たちはこう要望したんだ『美味しくない、改善してほしい』とね。遠山機械工業は週一回六十五歳以上の市民に社員食堂を開放してるんだが、利用した人間によると、味が天と地ほどの差があるそうなんだ。役所は食堂でも遠山に勝つことが出来ない。ため息がでるよ」
「ふふふ、亮ちゃん大変ね」
 それから私はいくつか“つまらない話”を京子に話した。
「京子ちゃん、約束だ、君のことをきかせてくれ」
「長くなってもいいの?」
「構わない」
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