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千一夜
第62章 第八夜 island 満月の夜
芥川龍之介と聞いて、思い浮かぶのは“蜘蛛の糸”とか“杜子春”だ。私は“歯車”という作品を初めて聞いた。
国語の授業で“杜子春”を習ったことがある。だが、それだって小学校の高学年のときだったように記憶している(少なくとも小学校の一年生では習っていない)。
河田は“歯車”を小学一年では読むことが出来ないと言った。ならばどうしてそれを河田は読むことが出来たのだろうか?
河田は嘘をつくような人間ではない。河田が読んだと言ったら、間違いなく河田は芥川龍之介の“歯車”を読んだのだ。
「質問していいかな?」
疑問をそのままにしておけない。
「何?」
「どうしてあなたは“歯車”を読むことができたの? 小学校の一年生では読むことができない漢字が多いと思うのよ。だからあなたは、小一では読み進むことが出来ないと言ったんでしょ? なぜあなただけが読めたの?」
「うん~ん、それなら親父のお陰だな」
「お義父様?」
「ああ。親父がね、毎朝新聞を読んでいたんだよ。でさ、僕は親父にこう訊ねたんだ『それ面白いの?』ってね」
「それでお義父様は何と言ったの?」
「親父はこう言ったんだ『世の中の出来事がすべてここに書いてある』とね。おそらくそのとき、僕はこう感じたんだろうな。これさえ読めば世の中のことをすべて知ることが出来ると」
「それで?」
「僕は新聞を読み始めたらしいよ。ひらがなさえ読むのが大変だったみたいだけど、好奇心の方がそれを上回ったんだな。わからない漢字は何度も何度も親父に訊ねたそうだ。親父はそれを嫌がらずに僕に教えてくれたんだ」
「へぇ~」
新聞をそんなふうにして読んでいる人間がいたなんて知らなかった。
「新聞の中には世の中の出来事だけが書いてあるわけじゃない、算数や理科、そして社会のことについても知ることが出来たんだ」
「算数や理科?」
「新聞を読み初めて最初に興味を持ったのが天気図だ」
「天気図?」
「だってさ、天気の予報をする人ってあれを見て解説するじゃないか。つまりそれさえわかれば自分でも天気を予想できるんじゃないかなと思ったんだ」
「それで?」
「高気圧だとか低気圧だとかを自分で調べた」
「どうやって?」
「学校には図書室があるだろ。疑問はそこで解決する。それにどうしてもわからなかったら先生に訊けばいい」
「はぁ~、なるほど」
私には無理だ。
国語の授業で“杜子春”を習ったことがある。だが、それだって小学校の高学年のときだったように記憶している(少なくとも小学校の一年生では習っていない)。
河田は“歯車”を小学一年では読むことが出来ないと言った。ならばどうしてそれを河田は読むことが出来たのだろうか?
河田は嘘をつくような人間ではない。河田が読んだと言ったら、間違いなく河田は芥川龍之介の“歯車”を読んだのだ。
「質問していいかな?」
疑問をそのままにしておけない。
「何?」
「どうしてあなたは“歯車”を読むことができたの? 小学校の一年生では読むことができない漢字が多いと思うのよ。だからあなたは、小一では読み進むことが出来ないと言ったんでしょ? なぜあなただけが読めたの?」
「うん~ん、それなら親父のお陰だな」
「お義父様?」
「ああ。親父がね、毎朝新聞を読んでいたんだよ。でさ、僕は親父にこう訊ねたんだ『それ面白いの?』ってね」
「それでお義父様は何と言ったの?」
「親父はこう言ったんだ『世の中の出来事がすべてここに書いてある』とね。おそらくそのとき、僕はこう感じたんだろうな。これさえ読めば世の中のことをすべて知ることが出来ると」
「それで?」
「僕は新聞を読み始めたらしいよ。ひらがなさえ読むのが大変だったみたいだけど、好奇心の方がそれを上回ったんだな。わからない漢字は何度も何度も親父に訊ねたそうだ。親父はそれを嫌がらずに僕に教えてくれたんだ」
「へぇ~」
新聞をそんなふうにして読んでいる人間がいたなんて知らなかった。
「新聞の中には世の中の出来事だけが書いてあるわけじゃない、算数や理科、そして社会のことについても知ることが出来たんだ」
「算数や理科?」
「新聞を読み初めて最初に興味を持ったのが天気図だ」
「天気図?」
「だってさ、天気の予報をする人ってあれを見て解説するじゃないか。つまりそれさえわかれば自分でも天気を予想できるんじゃないかなと思ったんだ」
「それで?」
「高気圧だとか低気圧だとかを自分で調べた」
「どうやって?」
「学校には図書室があるだろ。疑問はそこで解決する。それにどうしてもわからなかったら先生に訊けばいい」
「はぁ~、なるほど」
私には無理だ。

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