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千一夜
第62章 第八夜 island 満月の夜
「心配することはないよ」
「心配しなくてもいいと言う根拠があるの?」
「良輔と良幸を信じてやれよ。ちなみに今良輔が悪戦苦闘しているのは秘密基地の面積の求め方だ」
「何よそれ?」
「秘密基地の面積を求める、それからそれを四等分する。君と僕と、そして良輔と良幸でそれを分けると言っている」
「そんなことできるの?」
「無理だね。秘密基地は計算しやすい長方形や正方形の形をしていない。直線の部分もあればそうでないところもある」
「いびつな形をしてるんでしょ? そんなところの面積なんて求められるの?」
「求められるさ」
「小学生で?」
「それは無理だな」
「あなたは求められる?」
「もちろん」
「だったら良輔に教えてあげてよ」
「そんなことをしたら、僕が良輔の楽しみを奪うことになる。今良輔は求める方法を見つけようとしているんだ。だったらそのままにしておくの一番だよ。良輔は必ず答えを導く。僕は信じているよ」
「でも良輔はあなたと違って本なんて読まないわよ」
「はぁ~」
 河田がため息をついた。
「何よ、ため息つくなて失礼ね」
「君は何も知らないんだな。良輔は僕の部屋で本を読んでいる」
「それは小説?」
「ああ」
「タイトルは?」
「それは個人情報だから」
「はっ? 私、良輔の母親なんですけど」
「だったら良輔に直接訊ねればいいさ」
「はいはい」
 河田と良輔は似ている(当たり前のことだが)。
「ところで、来月の株主総会なんだけど」
「株主総会?」
「僕の会社の」
「ああ、あれか。会社と言っても役員はあなたと私、それにお義父さまとお義母さま、そして私の両親。どうしてもやらなければいけないの?」
「会社法でそう決めらている」
「あー面倒くさい」
「どこでもいいよ。海が見えるところでも、山の中の温泉でも」
 株主総会と言っても、それを利用して河田の両親と私の両親で一泊二日で旅行するのだ。
「去年はどこだったっけ?」
「箱根よ」
「麗子の両親は何て言ってた?」
「お部屋も素敵で料理も美味しかったと言ってたわ」
「だったら今年もそこにしようよ。いいだろ?」
「ええ」
 他所を探す時間が省かれる。
「良輔と良幸の話はこれでおしまいだ。いいよな?」
 そう言って河田は私を抱き寄せた。
「……」
 私は黙って人差し指を一本立てた。
「どういう意味?」
「今日は一回だけ、お願い」
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