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千一夜
第62章 第八夜 island 満月の夜
 河田は私の人差し指を自分の両手で包んでこう言った。
「今夜は満月だ」
「満月?」
「そう、満月の夜」 
 それがどうかした? と河田に訊ねるのは躊躇われた。
 正直、いやいや正直も何も、私はこの島に来るのが嫌だった。しかし、島の生活に慣れてくると、これはこれでいいのかなと思うようになった。
 子供たちは河田と毎日遊ぶ。それこそ朝から晩まで、彼らは汗まみれになって島の自然を楽しんでいる(羨ましいくらいに)。
 時間になれば美味しい食事は用意されているし、洗濯も掃除も宿のおじいさんとおばあさんがしてくれる。
 携帯のゲーム機を持ってきたが、どうやらこの島にはそれは必要なかったようだ。夕食後開催されるトランプゲームが子供たちの心をギュッと掴んだ。
 良輔が作った勝敗表によると一位と二位は良輔と良幸が争っていて、三位が私、びりが河田ということになっている(幸いなことに河田が勝ちを譲っていることをまだ子供たちは知らない)。
 何が言いたいのか、それはつまりこの島での生活を新鮮に感じているのは、河田や子供たちだけではなく、すでに私も河田や子供たちと同じ思いをしているということだ。
「満月の夜には何が起こるの?」
「この島では人が変身すると言う言い伝えがあるようだ」
「そんなの初めて聞いたんだけど」
「……」
 河田は薄く笑って私の乳房を揉み始めた。
「ねぇ、お願いなんだけど、今日はこれで」
 河田の手から解放された人差し指をもう一度立てて河田に見せた。
「考えておくよ」
 河田はそう言うと私にキスをした。
 いつもとは違って甘いキスだった。大切なものを労わるような感じのキス。河田の舌が私の口の中に入って来た。私の舌と河田の舌が絡み合う。
 乳房を弄っていた河田の手が、私の陰部に伸びて来た。河田の人差し指が割れ目の筋に入り込んできた。一本線をなぞるように指が動く。するといきなり河田の中指が私の雌口に忍び込んできた。
「もう濡れてるな」
 河田がそう言った。
「……」
 “濡れてるな”と言われて「はい」と答える女はいない。
「今日は満月の夜なんだ。麗子が濡れるのもいつもより早くなる」
「……」
 私には河田の言っていることが理解できなかった。
 満月の夜、この島で私も変身するのだろうか。
 だったら、私は何に変身するのだろうか。
 
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