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千一夜
第63章 第九夜 隣人たちとの狂宴
本当は京都大学に行きたかった。
自分で言うのも何だが、模試の判定はいつもAだったし、高校の担任も京大合格の太鼓判を押してくれた。
高校二年のときに僕は英検一級を合格している。英語は中学時代から好きだった。入試が英語だけなら、僕は誰にも負けないという自信があった。
だが、僕が学ぶことになった大学は京都大学ではなく、中国地方にあるH大学だ。
僕の家は、愛媛県の観光地で土産物屋を九店舗展開する会社を経営している。社長は僕より十歳年上の兄で、兄には二歳年上の妻がいる。会長と副会長は僕の父と母。しかし父と母についているその肩書は看板みたいなもので、事実上経営のトップは兄一人…と言いたいところだが、兄を操る人間が兄の後ろに隠れている。それは兄の妻であり、僕にとっては義姉になる人だ。
僕は三人兄弟の二番目で、僕には二歳下の弟がいる。僕たち兄弟の仲は悪くない。もちろん兄弟喧嘩の一つや二つはあったと思う。しかし、幸いなことに兄弟が憎しみ合うようなことは一度もなかった。
兄は僕を可愛がってくれるし、弟も僕を兄として頼ってくれる。ところが僕ら兄弟には目に見えない境界線があるのだ。
なぜか兄も弟も高校を中退しているのだが、僕は愛媛県で一番の進学校に入学した。
兄も弟も勉強が嫌いだった。中学時代、僕は学年トップを誰にも譲らなかった。さすがに県内一番の進学校に進んでからは、学年トップを維持することはできなかったが、定期テストではいつも五番以内に入っていた。
高校入学のときから僕の目標は京都大学だった。
父や母だけでなく、兄も僕が県内で一番の進学校に合格したとき「よくやった。健次は萩原家の誇りだ」と言って入学を祝ってくれた。
僕と同じ中学に通う弟は、よく授業中に僕を知っている先生から「君のお兄さんは萩原健次君だよね。君のお兄さんは素晴らしかったよ。入学から卒業までずっと学年一位だったんだぞ。君もお兄さんを見習いなさい」と言われて鼻が高かったと言っている(最後の言葉は余計だとも言っていたが)。
高校入学と同時に提出した進路希望に僕は迷うことなく“京都大学”とだけ書いた。そのとき、僕の中には大学は京大しかなかったのだ。
「この萩原家から京大生が誕生するぞ」
そう言ったのは父だっただろうか、それとも母だっただろうか、もしかしたら兄? 弟?
僕は絶対に京大に行く!
自分で言うのも何だが、模試の判定はいつもAだったし、高校の担任も京大合格の太鼓判を押してくれた。
高校二年のときに僕は英検一級を合格している。英語は中学時代から好きだった。入試が英語だけなら、僕は誰にも負けないという自信があった。
だが、僕が学ぶことになった大学は京都大学ではなく、中国地方にあるH大学だ。
僕の家は、愛媛県の観光地で土産物屋を九店舗展開する会社を経営している。社長は僕より十歳年上の兄で、兄には二歳年上の妻がいる。会長と副会長は僕の父と母。しかし父と母についているその肩書は看板みたいなもので、事実上経営のトップは兄一人…と言いたいところだが、兄を操る人間が兄の後ろに隠れている。それは兄の妻であり、僕にとっては義姉になる人だ。
僕は三人兄弟の二番目で、僕には二歳下の弟がいる。僕たち兄弟の仲は悪くない。もちろん兄弟喧嘩の一つや二つはあったと思う。しかし、幸いなことに兄弟が憎しみ合うようなことは一度もなかった。
兄は僕を可愛がってくれるし、弟も僕を兄として頼ってくれる。ところが僕ら兄弟には目に見えない境界線があるのだ。
なぜか兄も弟も高校を中退しているのだが、僕は愛媛県で一番の進学校に入学した。
兄も弟も勉強が嫌いだった。中学時代、僕は学年トップを誰にも譲らなかった。さすがに県内一番の進学校に進んでからは、学年トップを維持することはできなかったが、定期テストではいつも五番以内に入っていた。
高校入学のときから僕の目標は京都大学だった。
父や母だけでなく、兄も僕が県内で一番の進学校に合格したとき「よくやった。健次は萩原家の誇りだ」と言って入学を祝ってくれた。
僕と同じ中学に通う弟は、よく授業中に僕を知っている先生から「君のお兄さんは萩原健次君だよね。君のお兄さんは素晴らしかったよ。入学から卒業までずっと学年一位だったんだぞ。君もお兄さんを見習いなさい」と言われて鼻が高かったと言っている(最後の言葉は余計だとも言っていたが)。
高校入学と同時に提出した進路希望に僕は迷うことなく“京都大学”とだけ書いた。そのとき、僕の中には大学は京大しかなかったのだ。
「この萩原家から京大生が誕生するぞ」
そう言ったのは父だっただろうか、それとも母だっただろうか、もしかしたら兄? 弟?
僕は絶対に京大に行く!

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