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千一夜
第63章 第九夜 隣人たちとの狂宴
 大学に通い始めて一週間が過ぎたころ、大学から僕にポータルサイトを通して連絡があった。
 萩原健次君

 教育学部の清水久です。
 次の日時に教育学部研究X棟 7A727号室までお越しください。
 〇月〇日 15:00
 お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。
  
 H大学教育学部教授 清水久

 僕なんかに何の用があるのかわからなかったが、呼び出されたら行かないわけにはいかない。
 〇月〇日 指定された時間通りに僕は清水の部屋をノックした。
「どうぞ」
 部屋の中から清水の声が聞こえた。
「失礼します」
 僕はそう言って清水の部屋に入った。
 部屋には清水だけでなく女の学生が一人いた。
「そこに掛けてくれ」
「はい」
 応接セットのソファに腰を下ろした。僕の目の前には清水、清水の隣には女が座っている。
「こちらは僕のゼミの上野里香君だ」
「上野です。よろしく」
「萩原健次です。よろしくお願いします」
「君が三冠王か」
「三冠王?」
 清水の言った三冠王の意味がわからない。
「英検一級、TOEICのスコアそしてTOFFLのスコアが両方とも満点」
「ああ、それですか」
「上野君、うちのゼミに三冠王はいないよな」
「残念ながらいません」
「萩原君は僕たちの前でこう言ったよ『ああ、それですか』とね、君も聞いたよね?」
「はい」
「さすが三冠王だ。萩原君、早速だが、これを読んでくれないか?」
 清水はそう言って僕に一冊の本を渡した。
 フォークナーの8月の光、原書だ。
「どこから読めばいいでしょうか?」
「君の好きなところでいい」
「わかりました」
 僕は第一章から読むことにした。
 僕が読み始めると、清水は目を閉じた。
 一分ほど読むと「もういい」清水はそう言った。
「完璧だ。間違った発音無し、ネイティブだよ。上野君、どう思う?」
「先生のおっしゃる通りだと思います。悔しいですが」
「悔しいか……それじゃあもう一つやってもらいたいことがある。これから上野君が読み上げる日本語を英語に通訳して欲しい。同時通訳だ。できるかね?」
「多分」
「よし、始めよう」
 清水がそう言うと、上野が手にしているA4サイズの用紙に書いてある日本語を読み始めた。
 経済用語がいくつか出てきたが難しくない文章だった、もちろんそれを英語にするのに面倒なことは一つもなかった。
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