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背徳のキス
第2章 1話目
「....お主、人魚に会いに行ったんじゃろ?それにしては顔色が悪いのぉ。如何した?」
白髪の前下がりなボブを揺らして、振り返り老人口調でレヴァイアタンにそう声をかけたのは、ラハブという魔海生物だ。実際は全長1000kmの巨大海蛇であり、その大きさからレヴァイアタンと同一視される事もあるが、擬態魔法で現在上半身は人間、下半身は黒鯛の人魚のような見た目をしている。魔界の海を支配する絶対的存在のレヴァイアタンの次に怒らせてはならないとされている。
「悪気は無かったんだけど、とある人魚を怒らせちゃったんだよね。後、僕の自慢の髪をワカメって呼ばれて....。」
「..........なして、そのような事に?」
「....実は....。」
レヴァイアタンは、聞き取りにくい、ボソボソとした声で事の顛末を語り始めた。
「....可哀想に...人魚は美声史上主義じゃぞ?忘れたのか?」
「え、そうだったっけ....?」
「加えて容姿史上主義も強いですよ、レヴァイア様。」
観賞魚達が入ったアクアリウムに嬉々として餌やりをしていたセイレーン、ベローネが、レヴァイアタンとラハブの会話に割り込んだ。
彼女は正真正銘の人魚だが、一度死を迎え、天国に行けずに、魔海生物として転生した人魚だ。神の国に入れなかった理由は、現世で悪魔と契約を結び、復讐を働いたからである。そしてその契約を結んだ悪魔とはラハブである。