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背徳のキス
第3章 2話目


「どうじゃ、少しは頭を冷やせたか?」


「....まあ....おかげさまで....」


「表情筋が死んでいる上に今にも消えそうな声じゃが、ひとまず会話は出来るようじゃな。安心した。」


「一応ね。」



「で、こんな丑三つ時に何があった?」


「.....僕の結婚指輪が無くなっちゃって....。」


「ああ、エレナとの指輪か?まあ、お主が溺愛していたのは知っている故、指輪如きとは言わんが、もう少し落ち着いて捜索出来ぬのか?皆、岩陰で震え上がっとるわい。」


「....ごめん....死活問題だったんだ。早く指輪を見つけ出したくて。」



「指輪なら、昨日訪れた人魚の棲まう下界の海の方が可能性があるのでは?普段のお主ならすぐ考えつくじゃろうが。我を忘れる程取り乱しても何も良い事は無いぞ。気をつけろ。」


「......うん.....そうだね....気をつけるよ....。もし見つからなかったら僕の水死体が浮かんでくるから、その時は後処理よろしく。」


「アホ抜かせ、不死身のお主がそう簡単に死ねるか。」


「もう精神的に死んでいる。」


「全く、魔界のNO3が情けない....。」


「悪かったね、情けなくて。でも僕が死ねば君は四代君主に繰り上がって、魔界のTOP4の仲間入りだ。実に喜ばしい事じゃないか、おめでとう。じゃあ僕は寝るからおやすみ。」


「希望を捨てるな、下界の海に探しに行け馬鹿者。それとお主の暴走行為で住処を吹っ飛ばされている者達が続出しておる。寝る前にここら一帯に修復魔法をかけていけ。」



「あーはいはい、分かりましたよ。」


“僕を止める為とは言え、君も大概だと思うけどな...“


ラハブの説教を受けながら、レヴァイアタンは腹の底でずっと思っていたが、言えば無駄な口論に発展する為、グッと堪えたのだった。

話は済んだようで、ふわぁと大あくびをすると、黙々と修復魔法を施していくレヴァイアタンを背にラハブは引き返していく。


”無事収まったようで良かった....。
ついに世紀末を迎えるかと思った....。“


岩陰に身を潜め、命の危機を感じていた魔海生物達は、やっと安堵の溜息を付けたのである。


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