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背徳のキス
第3章 2話目


※シェリー視点


マーメイド、マーマンは容姿端麗か眉目秀麗でなければならない。

そして絶対音感を持ち、音楽楽器の演奏技術が行えるのは無論の事、圧巻の歌唱力が有るのは当たり前。


だから不細工と音感能力が貧弱な人魚は嫌われる。

私もその嫌われ者の1人。


人魚の宮殿に住んでいたけど、皆の陰口が酷くて宮殿から遠く離れたこの洞窟に逃げて来た。


孤独で色々不便だけど、ここなら誰も私の悪口を言わないだろうし、自由に歌を歌ってもいい。


だからすっかり油断していた。
まさか自分の稚拙な歌声を聞かれているなんて夢にも思わなかったのだ。


「本当、最悪....。」


ひとしきり喚き散らし、名も知らぬ意地悪なマーマンが去った後、シェリーは独りごちた。

生物の種類が違うならまだしも同族だ。

同族ならば、人魚の常識は百も承知の筈。

それを知っている上で、初対面であの嘲笑。
最後の方は謝っていたが、心の底では見下していたのだろう。きっと心根が腐っているに違いない。


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