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官能能力者 あおい
第30章 えっちな合宿:彼女のシンジョウ
合宿編最終章第二弾です。この章は語り部を折木さんにしてお送りいたします。
なぜなら、合宿の帰りの電車で起こったことには、私がものすごく後に知ることになった彼女の深い深い心情が隠されていたからである。

☆☆☆
合宿が終わった。
この夏休み、何もせずに佐々木先輩と会えるのは今日で最後だ。
女子3人と先生を加えた向かい合わせのシート。新幹線は私の思いとは裏腹に時速300キロの猛スピードで東京駅へと向かっていく。
仲良く女子同士でトランプゲームをするのは楽しくて、これはこれで矢のように時間が過ぎ去ってしまう。

それでも、やっぱり思ってしまう。
今、背中合わせにいる佐々木先輩と隣同士で帰りたかった、と。

先輩と私が付き合い始めたのは、ほんの3ヶ月前だった。

私は中学校時代からどんくさくて、ファッションのセンスもなくて、あまりトークも上手じゃなくて、男子は愚か、女子の友達も少なかった。

家でも、優秀な姉と、誰にでも可愛がられる弟の間にいて、特段悪いこともしないが、特段いいところもない、誰からも気にされない、そんなポジションにいた。

別に、勉強ができないわけでもない、運動が不得手なわけでもない、友人自体は少ないが、いじめられているわけでもなければ、趣味だってきちんとある。

ただ、ずっと、私はひとりで生きていくんだなと、本気で思っていた。

まるで、真っ暗な道をたったひとりで延々と歩くことが生まれながらにして決まっているような、そんな錯覚すら覚えた。

私は、こんな自分をあまり好きじゃなかった。
いつも人目を気にするようにしてコソコソしていた。
数少ない友人は、私の前髪が目にかかるほどのヘアスタイルを「少しあげたほうが可愛いよ」と指摘してくれたりもするが、なんだか人の目を直接見るのはとても怖かったので、これくらいのほうが良いと思っていた。

そんな私に転機が訪れたのは、ミステリ研の新入会員歓迎会のときだった。
小学生の頃から、古い方では江戸川乱歩の少年探偵シリーズ、新しい方では最近のミステリ作家の作品まで幅広く読んでいた私が高校に入って真っ先に選んだ部活がこのミステリ研だった。
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