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官能能力者 あおい
第33章 間章:折木さんの夏休み
この章では間章として、ちょっと横道にそれて折木さんのお話をしたいと思います。
語り部も折木さんに交代します。
夏休みも終わりにさしかかったある日の折木さん、何やら悩んでいるようです。
☆☆☆
夏休みがこんなにも辛く感じたのは初めてだ。私は去年まで一体どうやって過ごしていたのだろう。毎日、朝起きて、夏期講習や宿題、あとは本を読んで、食事をして、お風呂に入って、寝る。その繰り返し。

何もかも味気がない。心にも、そして、身体にも穴が空いてしまったようだ。
猛烈な欠乏感・・・

古事記の国産み神話では「なりなりてなり足らぬところがある」とイザナミが言った。私はまさにそれだ。わたしひとりでは完成しない。

佐々木先輩に会いたい。
話をしたい、触れあいたい・・・。

ゴロリとベッドで寝返りを打つ。隣では姉が軽い寝息を立てている。暑いので開け放している窓から注ぐ月明かりが寝室を四角く青色に切り取っている。

この月を、先輩も見ているのかしら?

眠れない・・・。恋人なら、こんなとき、電話をしたり、メッセージを送ったりする事ができるのだろうが、私と先輩は違う。

明日、会いに行こうか・・・。
セックスを口実にすれば、会ってくれるだろうか?

今は、それでもいい・・・。
彼は私の身体を求めてくれるけど、私と私の身体は似ているようで違う。
でも、求められないより、マシだ。

私は、スマホを取り出すと、一言だけメッセージをいれた。

「セックスしたいです」

さすがに夜中の2時だ。すぐに返事はない。
明日返事があることを祈ろう。

結局、朝までうつらうつらしながら過ごすことしかできなかった。

先輩から返信が来たのは、次の日の午後だった。
午前中は夏期講習、午後は特に用事もなかったので、図書館にいた。家に帰っても良かったのだが、なんとなく、家には所在がない。自分のことを知らない誰かのそばにいるほうがずっと落ち着くというのは妙な感じだと自分でも思う。
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