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官能能力者 あおい
第33章 間章:折木さんの夏休み
返信は素っ気なく、2日後の夕方という日時と、繁華街のカフェの名前が記されているだけだった。
今日じゃないのか・・・。そういえば、先輩は新しいギターを買うためにバイトをすると言っていた。そのせいだろうか?ホテル代も出ないだろうから、もしかしたらセックスはおあずけかも知れないが、それはそれでいい。なんなら、私が出したっていいくらいだ。

胸にぽっかり空いた虚ろを持て余す。
本を読もうにも、内容が入ってこない。
仕方がない・・・。

私は本を閉じ、図書館をあとにした。
こういうとき、私は気が済むまで歩くことにしている。
街を抜け、公園を過ぎ、川に出る。水が流れるのを見ると少しだけ落ち着く。都会でも、川には魚が泳いでいるし、シギのような大きな鳥がじっと置物のように佇んでいる。
そんな様子をただ、見ている。
背後には車がひっきりなしに通っている大通りがあるが、私の世界には音もなく、色もない。

早く、2日経たないかな・・・。
会いたいよ、佐々木先輩。
私の世界に色を付けて、音楽を頂戴・・・。

欄干にそっと頬をつける。鉄さびの匂いが鼻につく。まるで、血のようだ。
あと2日をどうやって私は過ごせばいいのだろう。

☆☆☆
記憶が定かでないまま、ただぼんやりと時間が過ぎた。
やっと、今日、先輩に会える。

私は白のワンピースにつばの小さめなベージュのハット、ハットに合わせたベージュのサンダルという出で立ちででかけていった。なんということのない服だが、これでも悩みに悩んだ結果である。

指定されたカフェに、すでに先輩は居た。見ただけで、ふっと身体が軽くなる。
先輩の向かいに座る。先輩はアイスコーヒーを飲んでいたので、私も同じものをお願いした。

「先輩・・・会いたかったです」

私は上目遣いで言う。計算している所もあるが、先輩のほうがずっと背が高いので、自然とその様になってしまうというのもある。

「ああ」

先輩の返事はあまり色よいものではない。
なにか機嫌が悪いのだろうか?
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