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第33章 間章：折木さんの夏休み

ああ、そうか、一度、彼女を突き飛ばしてしまったことがあった。
きっと彼女は悪くないのに・・・。私が、悪いのに・・・。
今、謝るのはちょっと場違いだと思うので、謝罪の言葉は口にしなかった。その代わり、続きを話す。

「作戦失敗です。先輩を私に繋ぎ留めるために頑張ったのに・・・。セックスが目的だって思われちゃって・・・。でも、違うって言えなくて・・・違うけど、違わないところもあるから・・・。」

あれ？何言ってるんだろう？私・・・。
先輩といると、やっと私は私でいられて、触れ合っていると、とても安心して、だから、もっともっと深く深く触れ合いたくて・・・、それがたまたまセックスという形であって・・・。

「こんな事言うと、もしかしたら折木さん怒っちゃうかもしれないけど」
ずっと黙っていた高島さんが遠慮がちに話しだす。
「なんか、いいな・・・うらやましいなって」

うらやましい？私が？
こんなに必死でしがみついて、挙げ句嫌われてしまった私が？
自分の体を使うことでしか、繋ぎ止められないと思ったのに、それすら叶わなかったのに？醜いと思うことがあっても、うらやましいって？

ふつふつと怒りが湧く。あなたみたいに、誰にでも愛される人にはわからない・・・。

「あ、ご、ごめん・・・変なこと言って。」
私の表情の変化に気づいたのか、高島さんはあわてて謝る。
「でも・・・好きな人とあんなに深く繋がれて・・・それがちょっと・・・うらやましかったから・・・」
何故か顔を赤らめて俯き加減にボソボソと言う。

「え？好き・・・？」

『好き』・・・そうか、私は先輩が好きなのか・・・。
セックスのとき「好き」と言う事はあった。でも、それは限りなくお芝居の台本を読んでいる感じの「好き」、効果的なセリフとしての「好き」だ。
ずっと、ずっと私は先輩との関係を誰にもいわなかった。だから、誰にも定義されなかった。だからよく気付いていなかったのだ。

私は佐々木先輩が「好き」なんだ。

欠乏感が強すぎて、自分の気持にすら気付けなかった。

ああ、だからか・・・。自分ですら気づいていない気持ちに、先輩が気づくわけがない。
だから、私は先輩から見たら空っぽだった。ただただ、セックスしたがる空っぽの女。

そんなの・・・振られて当然だ。