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官能能力者 あおい
第33章 間章:折木さんの夏休み
色んな気持ちが混ざって涙が溢れる。気持ちがこんなにあふれることは、わたしにはとても珍しい。
きっと、このココアのせいだ。
ココアが温かすぎて、私の中の何かが溶けてしまった。

「会いたいよ・・・」

好きだから。会いたい。
とても・・・会いたい。

「もう一回、ちゃんと、話してみたら?」
おずおずと高島さんが言う。だいぶ遠慮しているようだ。
「私の知り合いで、ちょっとハチャメチャな人がいるんだけど、きっと、その人ならそう言うと思うの。『ちゃんと言わなきゃ伝わらないぞ』って。
 気持ち、言えなかったんだよね・・・?言って伝わらなかったり、聞いてもらえないと辛いけど・・・。ああ、でもやっぱ怖いよね」
なんか、この人、自分のことのように心配する。
そうだ、あのときも、「女の子なんだから、自分の体、ちゃんとしなきゃ!」って。心配されるのに慣れていないから、うまく受け取れなかったけど、きっと、今回も同じ。

高島さんは、私を心配してくれている。

私は、そっと指で涙を拭う。

「ありがとう。考えてみるわ」

人から何かを受け取るのが苦手な私には、これだけ言うのでも精一杯だった。
もう帰らなきゃ、ということで暇乞いをした。
ちょうど雨も上がっていた。

最後に気になって聞いてみた。

「高島さんは、好きの気持ちを、どうやって伝えたんですか?」

あの、柏木くんに、とは言わなかったけど、彼女は顔を真っ赤にした。

「え・・あ・・・えと・・。好きです、とか・・・大好き・・・とか?」

俯いて、もじもじする。その様子に私は思わず吹き出してしまった。

「怖く・・・なかった?」
「怖かったよ・・・。怖かったけど・・・自然と、口から、勝手に・・・溢れちゃって」

耳まで赤くなる。
そうだよね・・・そうだ。

できるかどうかわからないけど、私もちゃんと言ってみよう、と思った。

あなたが好きで、
大切で、
ずっと一緒にいたくて、
もっとあなたのことを知りたくて・・・。

そう言ってみよう。私の言葉で、セリフではなく。

そして、もし、もしも、振られたら、ここでまた、ココアを飲ませてもらおう。
今はそんなこと、図々しくて言えないけど、きっと、高島さんなら、飲ませてくれそうな気がした。
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