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官能能力者 あおい
第38章 間章:それぞれの文化祭①がんばれ美結ちゃん
☆☆☆
男は名を久我山柾(くがやま まさき)と言った。今日は先日告白して付き合うことになった彼女と初デートで星稜祭に来たそうだ。

「いきなり振られちまった・・・」
盛大に溜息をつく。
ちなみにここは私が案内した喫茶スペースだ。柾はコーラを、私はウーロン茶を飲んでいる。
「なにがいけなかったのかね・・・おや?」
柾がふと顔を上げる。一瞬目がきらりとしたかと思うと、素早く立ち上がり、
「あれ?君、ここの生徒?いやーかわいいねーその髪留めすっごく良いよー。俺、久我山ってんだけど、どう?一緒に星稜祭回らない?」
などと別テーブルの女子生徒に声を掛ける。
当然断られてすごすご戻ってきた。何だこいつ。

「なんか、俺ってどうも失礼らしいんだよね・・・。ああ!女心は難しいな・・・おう!」
今度は喫茶スペースに入ってきた我が校の2年生女子に目を輝かせる。「すっげー美人・・・」と心の声が丸聞こえだ。

「なんで振られたんかなぁ・・・?」
ため息をつく。

10分ほど話を聞くと、柾の主観では、彼女(田所玲奈というらしい)は突然怒り出して走り去っていったということだった。

ただ、その10分の間に、他グループの女子に声をかけること3回、保護者も含めた女性に対して「美人だ」だの「かわいい」だのと心の声を漏らすこと5回、落ち着きがないったらありゃしない。

まさかとは思うが・・・。

「お前・・・彼女の前でもそんな感じで他の女子に声かけたりしてんじゃないだろうな」
と私が尋ねると、きょとんとして、
「え?そうだけど?」
といいやがった。

いや、振られた理由はそれだろ。100%。
「彼女が怒るのは当たり前だ、そりゃ」
思わず呆れたように言ってしまった。それこそ失礼だと思ったが。
「え?なんで?だって、俺、それの100倍は玲奈ちゃんのことを好き好き言ってたのに?!」
私は頭を抱える。アホかこいつは。
「女子ってのは一緒にいる男子には自分だけを見ててほしいものだろが!」
「え?そういうもの?え?じゃあ、お友達になるために声をかけるのも?」
だめに決まってるだろ。私は首をふる。
「え?美人!とか言うのも?」
あほか!またまた首をふる。
「そ、そうだったのか!!なんてこった!!」
柾は頭を抱えてうずくまる。
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