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官能能力者 あおい
第39章 間章:それぞれの文化祭②折木さんとバラードと
☆☆☆
軽音部のセッションが始まる。赤や青の照明が飛び交う中、情熱的な先輩の歌声が響く。
技術的にはおそらくまだまだなところがあるのだろうが、腹の底まで響く音は、心地よくもあった。
最後の曲だ。片思いの男の気持ちを歌ったバラード。
《君はとてもきれいで、みんなのアイドルで
僕は君に恋をしていたけど
君の目に僕は映らない》
切ないメロディに乗せて、優しい先輩の声が響く。
彼女を思って、彼女のために。
静かに、バラードが終章を迎える。
「あーあー。まだ、時間ある?」
びーががが、とマイクの音が割れる中、先輩が運営に声をかけていた。運営がオーケーを出したようだ。
「アンコール・・・行きます」
静かな声。もう一曲あったのか。
「弱くてずるい男がいました。」
会場がシンと静まり返る。
「好きな人がいたのに、別の子と付き合ってしまうような、中途半端なやつでした。」
「え?何?」「どういうこと?」「演出?」
会場がざわつく。
「その別の子の愛に気づいていのに、好きな人を諦めきれない気持ちがあって、
その愛から逃げようとした、弱いやつです。
そんな、男の歌です。聞いて下さい」
曲が流れ始める。
先程のバラードよりもゆっくりとした曲調。
《君を傷つけることしかできなくて
弱い俺が悪いのは、俺自身が一番わかっている
待っていてくれというのは甘えだろう
ただ、もしももう一度言えるなら
この手で君を抱けるまで
やり直すことができるなら
あの時の笑顔の君を
この手で再び抱けるまで》
神様・・・
この曲が、私に向けられたものだと思うのは、贅沢でしょうか・・・。
そうであったら・・・いいのに。
涙が溢れてくる。
声が、心にしみてくる。
《謝ることも今はできない
君はもう、ここにいないのだから
ただ、もしももう一度言えるのなら
もう離さないと
君に言おう》
余韻を残しつつ、彼のセッションは終わった。
私は誰にも気づかれないように涙を拭う。
暗い道に、少しだけ光が差した気がした。
軽音部のセッションが始まる。赤や青の照明が飛び交う中、情熱的な先輩の歌声が響く。
技術的にはおそらくまだまだなところがあるのだろうが、腹の底まで響く音は、心地よくもあった。
最後の曲だ。片思いの男の気持ちを歌ったバラード。
《君はとてもきれいで、みんなのアイドルで
僕は君に恋をしていたけど
君の目に僕は映らない》
切ないメロディに乗せて、優しい先輩の声が響く。
彼女を思って、彼女のために。
静かに、バラードが終章を迎える。
「あーあー。まだ、時間ある?」
びーががが、とマイクの音が割れる中、先輩が運営に声をかけていた。運営がオーケーを出したようだ。
「アンコール・・・行きます」
静かな声。もう一曲あったのか。
「弱くてずるい男がいました。」
会場がシンと静まり返る。
「好きな人がいたのに、別の子と付き合ってしまうような、中途半端なやつでした。」
「え?何?」「どういうこと?」「演出?」
会場がざわつく。
「その別の子の愛に気づいていのに、好きな人を諦めきれない気持ちがあって、
その愛から逃げようとした、弱いやつです。
そんな、男の歌です。聞いて下さい」
曲が流れ始める。
先程のバラードよりもゆっくりとした曲調。
《君を傷つけることしかできなくて
弱い俺が悪いのは、俺自身が一番わかっている
待っていてくれというのは甘えだろう
ただ、もしももう一度言えるなら
この手で君を抱けるまで
やり直すことができるなら
あの時の笑顔の君を
この手で再び抱けるまで》
神様・・・
この曲が、私に向けられたものだと思うのは、贅沢でしょうか・・・。
そうであったら・・・いいのに。
涙が溢れてくる。
声が、心にしみてくる。
《謝ることも今はできない
君はもう、ここにいないのだから
ただ、もしももう一度言えるのなら
もう離さないと
君に言おう》
余韻を残しつつ、彼のセッションは終わった。
私は誰にも気づかれないように涙を拭う。
暗い道に、少しだけ光が差した気がした。