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幼遊戯
第9章 春休み~隆弘~
……遅い。

いくら何でも遅すぎねえか?

もう7時まわっちゃってんぞ。

夕食までには帰ってくると思ってたのに。

何だか妙な胸騒ぎがして、俺は鍵だけ持って部屋を出た。

本館の入り口から遥香に似た女の子を探すけどなかなか見つからない。

階段を昇りお風呂場の辺りまで来たところでやっと遥香を見つけた。

「はる……」

声をかけようとしたところで、彼女が誰かと話しているのに気づく。

長身のイケメン。

年齢は30才くらいだろうか。

余裕のない俺とは違う大人の雰囲気を醸し出している。

ここで遥香が嫌がったりとか、困ったりしてれば助けられたのに、彼女は嫌がるどころか談笑している。

……俺よりそいつの方がいいのかよ。

八つ当たりだってことは分かってた。

ただの嫉妬だってことも重々承知してる。

だけどこんな感情初めてでどうしたらいいのか分からない。

今すぐにでも遥香は俺のもんだ、って言いたいのに嫉妬の中で渦巻く不安が今度はそれを制止した。

本当に遥香は俺のものなのか?

さっきの態度で愛想つかされたんじゃないのか?

堂々巡りの問いが頭の中をぐるぐると回る。

「あ、隆弘!」

立ち尽くす俺に、遥香の方が先に気付いた。

「あ、もう夕食だから……」

「あ、そうだよね。ごめん、ごめん。行こ」

さっきの奴に一礼して、遥香が食堂へと向かう。

あいつのこと何にも言わねえけど、何話してた?

喉まででかかった台詞をぐっと奥に飲み込んだ。

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