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彼女はボクに発情しない
第11章 眠れぬ夜の間奏曲
「ああ!美味しそうなお弁当だー」
どこかから声がした。左右を見渡しても誰もない。
まさかと思い、上を見ると階段昇降口の上、多分普通の人は登らないようなところから私を見下ろすようにしている人影があった。

びっくりして声も出なかった。

その人はぴょんと私の傍らに飛び降りると、

「ここ、いいよね!お弁当食べるのに。穴場だよねー」
等と言う。なぜか首から双眼鏡をぶら下げていた、その人は「じゃね」と言うと私の横を通り抜けて階下に降りていってしまった。

あ・・・あれって、あの人だ。

その男の子は、入学試験の日、私を助けてくれたあなただった。

この日から、私は雨の日以外は屋上でご飯を食べるようになった。あなたは私が一人で食べていても気にしていないみたいだし、ときどき話しかけてくれたからだ。

「今日もいい天気だねー」
「その卵焼き美味しそう」
「え?お弁当、自分で作ってるの!?」

なぜかあなたは昇降口の上で双眼鏡を使って辺りを見渡していたし、日によっては慌てて階段を駆け下りていくことも多かった。でも、急いでないらしいときは、私に話しかけてくれた。

別にすごく仲がいいわけじゃないけど、ひとりじゃない、と思えたのは、私にとってとても大事なことだった。

あなたが支えてくれたお陰で、私はゆっくりだけど、クラスに友人を作ることが出来た。

あなたの名前が「高山陽太」だっていうことも、その時知った。

これが、二度目。
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