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彼女はボクに発情しない
第12章 夏の初めの多重旋律
それにしても・・・。三人のトークを聞いていて、私は思わず笑ってしまう。
陽太はいつも周りの人を明るくする。きっと、陽太自身が見栄を張ったり飾ったりしないからだと思う。それに、陽太はとても優しい。きっと、みんなにもそれがわかるんだ。
帰りの支度をしていると、どうやら陽太は遊びに誘われているようだ。
様子をうかがうと、陽太がチラっと私の方を見る。・・・心配、してくれているの?
大丈夫だよ。何かあったら、ちゃんと言うから。それ以前に、なにもないように頑張るから。
私は小さく頷いた。
楽しんできて、陽太。
なんだろう。女の子と遊びに行くときはあんなに苦しくなったのに、男の子のときはそんなことはない。どんな状況でも、私がピンチのときは来てくれると信じられるから。
女の子のときも、結局は来てくれた。それでも、きっと、今日、大槻さんや笹本さんが陽太を遊びに誘ったら、私は普通じゃいられないような気がする。
やっぱり、妬いているのだろうか?
なんだか、ちょっとそんな自分は嫌だった。
もう一度、ちらっと陽太の方を見た。男子三人で楽しそうに話をしている。
考えてみれば、私、最近、陽太と楽しくお出かけしたことなんてない。
私が誘ったら、陽太は来てくれるかな。
私と、デート、してくれるかな。
一学期最後の日。
今日が終われば、しばらくは陽太となんの口実もなくは会えない。
私は後ろ髪を引かれる思いで、ゆっくりと教室を後にした。