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彼女はボクに発情しない
第13章 組曲:夏の夜の願い ”異榻同夢”
【Midsummer Night's Wishes suite No.1『Different people have the same dream』】

浴衣はある。

しかし、勇気がない。

部屋着のままベッドに仰向けになり、ため息をつく。
お祭りなんて、小さい頃は散々一緒に行ったじゃないかと思うのに、なんで陽太を誘うのに、こんなに躊躇するんだろう。

昔は、こんなに陽太のことが好きだと、気づいていなかったから・・・?

考えて赤面してしまう。意識するとますますダメになる。
私はこんな葛藤を、もう3日も続けていた。

ピンポーン

呼び鈴が響いた。夜9時。この時間にうちの呼び鈴を鳴らす人なんて限られている。

「奏〜、ちょっと出て〜」
母の声。はーいと答えた。

玄関を開けると、案の定、風香ちゃんだ。
あの妙な同盟ができてからというもの、前よりも頻繁に、こうして夜に遊びに来るようになっていた。

「おじゃましまーす」
母も勝手知ったるもので、顔も見せずにキッチンから「いらっしゃーい」と大声て答える。

風香ちゃんがくる理由は色々だ。勉強を教えてほしいと言ってくるときもあれば、スマホゲームを一緒にやろうと言ってくるときもある。単におしゃべりしにくることもあったりする。

「奏お姉ちゃん、お菓子持ってきたから一緒に食べようよ」
風香ちゃんといると、まるで自分に妹ができたみたいで楽しいので、私は大歓迎である。今日は友達から美味しそうな和菓子をもらったので、一緒に食べようということで来たらしい。

お茶を入れて、一緒に食べる。確かにおいしい。二人でおいしいねーと言いながら食べるのはなんだかそれだけで楽しい。

「あれ?このチラシ・・・」
食べ終わって、彼女が見つけたのは、私の勉強机の上に置きっぱなしになっていた須賀大社の夏祭りのチラシだった。
「陽の部屋にもあったような・・・」
ああ、そうか、学校の最寄り駅で配っていたから、陽太ももらっていても不思議じゃないよね。でも、捨てずに持っているということは・・・。

陽太も、行きたいってこと?
誘ったら、来てくれる・・・かも?
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