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彼女はボクに発情しない
第14章 組曲:夏の夜の願い ”優しい祈り”
奏はちょっと咳払いをしてマイクを取ると、落ち着いた口調で「この浴衣は母のもので・・・」と語りだす。さっきまで顔を真っ赤にして怒りに打ち震えていたのに、切り替えが早い。

「はい、では、ランナーさんのアピールをお願いします」
えええ?!アピールって、これ・・・父ちゃんのだしなあ。
戸惑っていると、奏がボクからすっとマイクを取って話しだした。

「ランナーさんは、普段はTシャツとかしか着ないのに、今日はビシッと浴衣を着こなしてて、すっごくいいと思いました!シックな黒い色がとっても様になっています!」

わーっと会場から拍手が湧く。
助かったよ、奏。

「いいですね。お互いに、浴衣姿に惚れ直したというところですね!では、最後に、今日の神社でのお願いごとを教えてください!」

マイクが奏に渡る。
「色々お願いしたんですが、一番は・・・私が私の大事な人を幸せにできますように、です。」

ほーう、と観客がどよめく。
次にボクにマイクが向く。いや、最後の願いはまずいだろ、かといって、他のも・・・いや・・・。ああ、時間がない!!

テンパりにテンパった挙げ句、ボクの口から飛び出したのはこんな言葉だった。

「ホルンさんを守れますように!です」

おお!会場がどよめく。なんて小っ恥ずかしいことを!

「まあ!素晴らしいですね。では、エントリーナンバー8番、ホルンさんとランナーさんに拍手をお願いします」

わーっと会場から大きな拍手が湧いた。
ああ、冷汗かいた。

最後、「ホルンさんが幸せになりますように」って言ったほうが良かったかな・・・。まあ、もうしょうがないけど。

ここで10分ほど休憩している間に、審査員の審査と、会場票の集計が行われる。会場票は今風にスマホ投票なので、あっという間に集計できるらしい。

なんか、うまくアピールできなかったな・・・。ボクのせいで優勝逃しちゃうかもしれない。
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