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彼女はボクに発情しない
第17章 恋敵協奏曲
教室に入ると、席が半分くらい埋まっている。前の方にしようかときょろきょろ見渡していると、知っている影が目に入った。

笹本さん?

私と同じくらいのセミロングの髪の毛をひとつ結びにして高く結んでいる。いわゆるポニーテールというやつだ。それに丸い大ぶりのメガネ。全体的にやわかな曲線を描く女性らしい体型の女性は、紛れもなく笹本優子さんだった。

同じ予備校だったんだ・・・。

陽太とのデートを賭けた勝負のことが思い出される。陽太は彼女とのデートの途中でこっちに来たんだよね?

笹本さんは、私のことをどう思っているんだろう?

彼女も気付いたのか、私に向かってそっと頭を下げたので、私も同じようにしかえした。
やっぱり気まずいな・・・。

授業の後、陽太と合流する。授業前よりも、陽太の顔色が悪い。勉強が、脳に響いたらしい。

「ちょっと飲み物買ってきていいか?」
陽太が言うので、私の分もお願いした。コンビニで陽太は自分用にコーラを、私用に無糖の紅茶を買ってきてくれる。こういう時、何も言わなくても好みのものを買ってくれる辺り、幼馴染って便利だなと思う。

「ああー、疲れたー」
陽太はコーラを一口飲んで、盛大にベンチに反っくり返る。よほどだったらしい。私は思わすクスクスと笑ってしまう。
「奏はいいよなー。勉強できて・・・テストも余裕だし」
「そんなことないよ。私だって、勉強してるよ」
「あー、まだ9日間もあるのかよ・・・。宿題もあるってのに」
「陽太は、宿題やらないじゃん」
「やってるわい。ただ、間に合ってないだけで」
それ、やっていないっていうんだよ。
去年の夏も最後の1週間は大変だった。私はほぼ毎日のように陽太の部屋で陽太の宿題補助をしていた。陽太は『これじゃあ、合宿、じゃなくて、缶詰だ〜』等と言っていた。この分だと今年も同じかな?

私は嬉しいけど。

陽太がまた、一口コーラを飲む。どうやらあまりの疲れで動きたくないらしい。私もわざとゆっくり紅茶を飲む。

夏の炎天下、陽太との時間が、何よりも愛おしかった。
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