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彼女はボクに発情しない
第19章 キスに焦がれる輪唱曲
「わー!すっごーい」

窓ガラスの向こうには海が広がっていた。そう、ここゲームポリスは海辺の施設なのだ。ちょうど窓際の席が取れたので、奏も大満足のようだ。

「ええっと・・・私はこれ。陽太は?」
奏が選んだのはサンドイッチのセット。ボクはハンバーグランチにした。ボリューム的にもそこそこで、景色込みということで、まあ納得のいく料金だった。

館内マップを見ながら、次はどこに行こうかと話すのが、なんだか楽しい。
よく考えてみれば、奏とは最近、合宿のときに勉強の話をしたり、『発情』のときに少し会話を交わすくらいだった。こうしているとまるで昔に戻ったみたいだ。

「なんか、こういうの久しぶりだね。陽太」
奏も似たようなことを考えていたらしい。ちゅーっとストローでオレンジジュースを飲む。
「そうだね」
ボクもアイスコーヒーを飲んで口を湿らせる。
奏が外を見た。真っ青な空と、負けないくらい真っ青な海が広がる。
昔、奏たちと海に行ったことを思い出した。まだ小さい奏が波を追いかけて走っていた。

「きっと、私がこんな病気じゃなきゃ・・・ううん。なんでもない・・・」
奏が何か言いかけてやめた。病気じゃなければ・・・なんだろう。
「だ・・・大丈夫だよ。奏には何もないように、絶対、守るから」
この言葉に嘘はない。どんなときも、奏が傷つかないように、ボクはいつだって、走っていく。そう思っている。
「嬉しいよ」
そう言って、ボクの方を見た奏の顔は、その言葉とは裏腹に何故かちょっと寂しげだった。
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