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彼女はボクに発情しない
第22章 陽気な家族のための小舞曲
そ・・・そうですか。
時刻は10時である。放っとくにもほどがあるのではないだろうか?
どうぞ遠慮なく上がってくださいな、ということなので、そのまま上がらせてもらった。陽太には来ることは伝えてあるので問題はないだろう。

階段を上がり、陽太の部屋の扉を軽くノックする。が、音沙汰がない。もう少し強く叩いてみる。・・・反応がない。

様子をうかがっていると、隣の扉が開いて風香ちゃんが顔を出す。
「あ!奏お姉ちゃん!おはよう」
「おはよう、風香ちゃん」
風香ちゃんの顔を見て思い出した。今度、風香ちゃんにもあのフルーツタルトを買ってきてあげよう。
「陽兄?」
「そうなの。ノックしても出てこなくて・・・。まだ寝てるのかな?」
「構いやしないから入っちゃいなよ」
さすが兄妹。遠慮がない。風香ちゃんはそのまま陽太の部屋の扉をバンと開いた。

部屋は男の子の部屋っぽく、多少散らかってはいるが、まあまあきれいな方だと思う。もちろん、陽太以外の男の子の部屋なんて見たことないが。

私の家と陽太の家は、同時にできた建売で、ほとんど構造が一緒だ。陽太が使っている部屋は家では私が使っている。自分の部屋と間取りが一緒の所に陽太がいる、というのは何か妙な気持ちにならないでもない。

あ・・・なんか、陽太の匂いする。
1学期の中間や期末のときも『合宿』で陽太の部屋を訪れてはいたが、こんな風に陽太の匂いを感じることはなかった気がする。

あの、お祭りの日のせいかな・・・。
陽太の精液を・・・、とか思い始めて、慌てて頭を振る。
いけない、変なこと思い出しちゃうところだった。

「陽兄!奏お姉ちゃんきてるよ!」
ちなみに陽太は適度に空調が効いた部屋の中、グースカとベッドの上で寝ていた。風香ちゃんは全く遠慮する様子なく、陽太の上掛けを剥ぎ取り襟首をむんずと掴むと陽太を引き起こす。
ついさっきまで幸せそうに眠っていた陽太が、「ぐえ!」っと妙な声を上げて叩き起こされるのを見るのはなんとなく忍びない。

ごめん、陽太。
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