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彼女はボクに発情しない
第25章 波乱の奇想曲
☆☆☆
ぴんぽーん

奏の家の呼び鈴を鳴らした。
「奏ー、おはよー」
声をかける。いつものボクの朝の日課のようなものだ。一緒に並んで行くわけではないが、声をかけて同じ時間に家を出る。全ては奏を守るためだ。

がちゃ、と扉が開く。
あ、奏かな?

ひょいと開いた扉の中を覗こうとすると、シュンとこめかみあたりを何かが掠めた。恐る恐る後ろを見ると、門柱にダーツの矢のようなものが突き刺さっていた。

「ちょっと!お兄ちゃん!?何してるの?」
「おお!すまん、ダーツの練習をしていたんだ」
嘘をつけ。確実にタマ取りに来ているじゃないか!
扉が開くと制服姿の奏の横に、爽やかな顔をした響が立っていた。

「いやあ、ごめん、ごめん。ちょっと植物性アルカロイドを塗ったダーツの矢の試射実験をしていたらたまたま扉を開けてしまってね〜。かすらなかったかい?」
残念、残念、とか言うな。ボクの拙い知識でも植物性アルカロイドが毒物を意味することくらいわかる。

奏がぐいと響を奥に押しやってくれる。
昔だったら、ボクと奏が連れ立って出ていこうとすると駄々をこねて暴れたものだが、それはさすがにしなくなったようだ。奏にきつく言われているせいかもしれない。

「ごめんね、陽太。大丈夫?怪我はない?」
奏がものすごく心配してくれる。ははは、とボクは笑って見せたが、冷や汗はかいた。
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