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彼女はボクに発情しない
第26章 狂おしき愛の追想曲
奏が小学生になる。
あんなジャリ共がうじゃうじゃいる無法地帯に奏を行かせるなんて正気の沙汰ではない。何日もかけて両親を説得したが、両親は「学校に行かせないわけにいかない」と僕の言う事を聞き入れてはくれなかった。
挙句の果てに、母に至っては、
「お隣の陽太くんと一緒の学校だから大丈夫よ」
と言う始末だ。

あいつがばい菌ではないとなぜ言えるのだ?

ああ!心配でたまらない。

もし、奏が僕の手の届かないところで怪我をしたら?
無能な教師に無理難題を押し付けられて涙を流すようなことがあったら?
あまつさえ、愚かなガキどもが奏をいじめるなどということがあったら?

正気が保てる気がしない。
僕の天使にそんなことしてみろ、貴様ら親類縁者含めて鏖(みなごろし)だ。

そして、恐れていたことが起こった。
奏が小学校2年の時だった。
僕が学校から帰ると、奏が膝から血を流していた。

「ど・・・どうした!?奏!!!」

ちょうど母に手当をしてもらっているところだった奏を僕は問い詰めずにはいられなかった。なだめたり透かしたりすることで、やっと状況がわかった。

「木下くんがふざけて突き飛ばしてきた」

キレる、とはこういうことか。
一瞬にして僕の世界が血の色に染まった。

次の日、僕は学校に行くふりをして、途中で引き返した。木刀を腰に、金槌を左手に、右手にはメリケンサック、もしこれらの凶器が使い物にならないときに備え、頭に巻いたハチマキに彫刻刀を二本差した。

「きぃいのしたぁー!!!どぉこだぁーーー!!!!!」

朝礼前、まだ校庭で大勢の児童が遊んでいるなか、僕は雄叫びを上げながら突っ込んでいった。

殺す!木下!!!てめえ!!!!

頭の中は復讐心でいっぱいだった。そもそも木下なるジャリの顔貌もわからない。その辺にいる子を捕まえて「木下はどこだ!!!」と聞いて回る。
視界の端で隣のクソ陽太がガタガタ震えているのが目に写ったが、今はアイツにかまけている暇はない。
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