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彼女はボクに発情しない
第26章 狂おしき愛の追想曲
人間はショックを受けると目の前が真っ赤に染まり怒りに打ち震えるが、それを超えると頭のブレーカーが落ちるらしい。

その事実を認知した後3日間、僕は常世と現世の間をさまようことになる。

夢の中、常世が僕を安寧に誘っていた。

「響・・・もうよくやった。お前は可愛い可愛い妹である奏のためによく戦った。だからもう、眠っていいよ」

冥界の安楽が僕を包む。このまま、それに任せれば幸せになることは明白だった。柔らかな光が僕を包み込む。このまま溶けてしまいたくなるほどの幸福感だった。

だが、僕は、再び立ち上がった。あえて選んだのだ。修羅の道を。
そう、奏への愛が僕を再び現世に引き戻した。

目が覚めた僕が最初に着手したこと、それは陽太の抹殺計画だ。

あいつがいるからいけない。いや、あいつの汚れた手が奏に触れるなどあってはならない!!

部屋にあった最も身近な凶器を僕は手にした。

金属バット

脳漿を・・・ぶちまけろ!!!

だが、やつは異常にすばしっこかった。何度か隙を突こうとするが、殺気を感じるやするりと逃げやがる。一度は公園の隅に追い詰めて金属バッドを振るいあげるところまではいった。

「殺った!」

思った瞬間、恐ろしい俊敏さで奴は身をかわし、かわりに僕のバッドはものすごい勢いでブロック塀にぶつかった。その衝撃で手が痺れ、やつを取り逃がす。

ちっ!

次はねえぞ、と逃げる陽太を睨みつけていた時、生涯で二度目の、そして、最大の衝撃が僕を襲った。

「お兄・・・ちゃん」
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