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彼女はボクに発情しない
第26章 狂おしき愛の追想曲
☆☆☆
しばらくの間、僕は母の実家である北海道に預けられた。父母は交代交代でやってきて、僕に海外に渡り、医者になって奏を治すよう説得してきた。

医者になる。
奏を治す。

そうしたら・・・そうしたら、奏は許してくれるのだろうか。

もちろん悩んだ。悩んださ。人生で一番悩み抜いた。
奏に会えない、遠くから見ることも、身につけたものの匂いを嗅ぐことも、奏の眠っていた布団にこっそり忍び込んで奏の体温を感じることもできないなんて。

だけど、反面、この世界に数例しかない奇病PIHを治療できる可能性があるとすれば、僕しかいないという確信もあった。このころ、すでに僕は奏に会える時間を削る学校という場所に行くのがアホらしいので、さっさと大検をとり、さらにTOEFL、GED、SAT、IELTSなどで最上位の成績を収めていた。大学なら、入り放題だ。

確かに、両親の言うことも一理ある。飛び級制度のない日本ではどんなに早くても医師になるだけであと7年はかかる。そして、研究をしたり、成果を認めさせるところまで考えれば10年はあっという間に過ぎるだろう。それなら、飛び級制度のある欧米でさっさと医師資格をとり、研究に着手するべきではないか。

10日間、悩んだ。悩みすぎて、体重が10キロ減った。

そして、11日目。僕は、渡英を決意したのだった。
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