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彼女はボクに発情しない
第28章 組曲:月下の夢 ”朱い月”
☆☆☆
それから、英国に出発するまでの3日間あまり、私はまるでロボットのように過ごしていた。

お風呂に入りなさいと言われれば入った。
ご飯を食べなさいと言われれば食べた。
寝なさいと言われれば寝た。

準備はお兄ちゃんとお母さんとで進めてくれている。私はただただ、時間が過ぎるのを心を空っぽにして待っていた。

少しでも何かを考えると、心が壊れそうだった。

「いよいよ、明日出発だよ、奏」
扉ごしに、お兄ちゃんが、言う。私は相変わらず部屋を真っ暗にして閉じこもっていた。部屋に満ちた暗闇が、カーテンを開け放った窓に四角く切り取られている。

空虚な部屋に、そこだけがぽっかりと光を放っていた。
外を見ると、赤くて大きな、禍々しい月が昇っているのが、見える。

明日・・・私は、ここから離れる。

ああ、そういえば、あれから陽太は一度たりとも、私に会いにこなかった。
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