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彼女はボクに発情しない
第29章 組曲:月下の夢 ”北極星”
☆☆☆
響から奏の最終登校日を聞き出すと、ボクはクラスメートにこう言った。

『奏は幼い頃からボクの面倒を見てて、ボクのことが心配過ぎて、イギリスに行くことができないんだ。だから、ボクが奏がいなくても大丈夫だとわかってもらうために協力して欲しい』

長谷川、弦次、酒井、田村さん、ルリ、それから、優子に協力を求めた。

この時、一番驚いたのは、優子が奏のPIHのことを知っていたということだった。今回のイギリス行きがPIHの治療のためだということを理解していた。
だから、より計画を完璧なものにするために、優子にはボクの恋人役になってもらうよう頼んだのだ。もちろん、これが外道な願いだということはわかっている。優子の好意を利用しているのだから。

それでも、優子は協力すると言ってくれた。

当日の段取りはこうだ。

優子に気をそらしてもらい、わざと紙袋を忘れて帰るように仕向けた。
昇降口で指摘し、教室に一人で戻るように促した。
戻る時を見計らって、男子3人と一芝居うつ。

筋書きは、ボクにはもう彼女がいて、日本で元気に暮らせるから安心して英国に行ってくれという内容にする、と言ってあった。

ただ、実際に芝居をしている時、ボクはアドリブを加えまくった。
ボクが優子のほうが大好きで、奏なんて端から好きではなく、いらない存在なのだというニュアンスを強く出した。

案の定、ショックを受けた奏は優子のことも顧みずにフラフラと帰っていった。

多分、十分な効果があったと思う。
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