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彼女はボクに発情しない
第30章 交響曲 ”彼女はボクに発情しない”
【Symphony "She loves me with all her heart"】

(2年半後、春)
春の柔らかな日差しの中、校舎に植えられたソメイヨシノがハラハラと花びらを散らせている。

「これ、ドッキリじゃねえよな!?」
スーツを着て、大学の門の前で記念写真を撮るボクを見て、長谷川が失礼なことを言う。

「お前・・・大学入れる知能あったのか!?」
弦次・・・。てめえ・・・。
「しかも医学部とか、超すごくない!?」
ルリだ。ちゃっかり弦次とおそろいの服を着ている。なんだ、お前ら付き合っているのか?

今日、ボクは一浪して入った大学の入学式を迎えていた。三流ではあるが、一応医学部だ。

「お前、医者とかやって平気なのか?人、殺したりしないのか?」
長谷川は電子工学系の専門学校の二年生に進級していた。今年は就職活動で忙しいと、暗い顔をしていた。

「今度、入学祝い皆でやろうぜ!」
弦次は地元の大学に進学。あまり聞き慣れない横文字の長い名前の学部に入学。一応勉強はちゃんとしていると主張していた。
「いいね!やろう!やろう」
ルリも同調する。ルリも今年大学2年だ。みんな、ボクよりも年次が上だなー。
ルリがあたりを見回す。「優子も来るはずなんだけど・・・」と。

正直、優子とは顔を合わせにくい。
奏がイギリスに旅立つとき、散々優子には協力してもらった。優子は超が付くほどいい子で、あんなふうに利用した最低男のボクと、それでも付き合いたいと言ってくれた時もあった。

だけど、やっぱり長続きしなかった。

互いにふとした拍子に思い出してしまうんだ。
奏という女の子の存在を。

だから、優子とは卒業以来会っていない。彼女は確か、外国語学科に進学したはずだ。将来は旅行会社に勤めたい、と言っていた。
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